2011年06月02日 14:30 〜 15:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」 被災地 県知事 記者会見 達増拓也・岩手県知事

会見メモ

冒頭、県内の津波被害の規模を数字で示した。6月1日現在、死者4510人、行方不明者2876人、避難者29000人。漁港と漁船の被害は9割を超え壊滅状態にある。沿岸部の47%が被害を受け、損害額は、3兆5千億円にも達するのでは、と。

政府の復興対応が遅れているのではとの質問については、全貌がみえていないとし、閣僚が被災地を回り、地元の経済状況や住民のニーズを把握する必要がある、と答えた。その上で、事務方が処理できるような体制をつくるべきだ、とも。

会見と同日に内閣不信任案が提出されたことについては、「野党が参院で多数を占めるねじれが続く限り、野党と連携しない限り、政府は機能しない。不信任案を出させないような政権ができることを希望する」と。

司会:日本記者クラブ企画委員 星浩(朝日新聞)

岩手県のホームページ

http://www.pref.iwate.jp/index.rbz


会見リポート

東北に復興院を

斉藤 徹弥 (日本経済新聞地方部編集委員)

東日本大震災の被災県知事のトップバッターとして登場した岩手県の達増拓也知事。「およそ人間の世界のことと思えない、神話の世界の中での出来事のような印象を受けたが、紛れもない現実だった」と切り出した。口べたでぼくとつな雰囲気が親近感を呼び、思わず応援したくなるというのが地元での知事評で、淡々とした口調が被害状況の数字を重く感じさせる。復興のリーダーにもいろいろなタイプがあるようだ。


同じ被災県でも岩手県と宮城県では復旧・復興への対応が異なる。ひと言で言えば、県主導の宮城に対し、岩手は市町村主体。津波浸水地域への建築制限で宮城は県が規制をかけたが、岩手は制限するかどうかの判断を市町村に委ねた。達増知事は「市町村が底力を発揮し、自治体同士の連携の輪が広がって今までにないようなオペレーションを展開している。地方自治の進化だ」と市町村を鼓舞する言葉を繰り返した。


復興の考え方にも違いがある。宮城は著名人を集めた会議で漁港集約など新しい将来像を打ち出しているが、岩手は地元の業界団体代表らが中心になって話し合い、元の暮らしを取り戻す復旧に重点を置くように見える。「それで大胆な発想が出てくるのか」と問われた達増知事は「ないものを探し回る時間はない。こんなものがあるという人たちにどんどん来てもらえれば」と述べた。


岩手出身の後藤新平が関東大震災の復興を迅速に進めることができたのは「被災地が東京で何が起きて何をしなければならないかすぐ把握できたため」と分析し、政府が東北に復興院を置くよう提唱。政治の師と仰ぎ、口べたでは似たところがある小沢一郎氏の動きは「ねじれ国会を克服するため工夫を凝らして行動していると思う」と察した。郷里の先達の経験を復興に結びつけられるだろうか。


ゲスト / Guest

  • 達増拓也 / Takuya Tasso

    日本 / Japan

    岩手県知事 / Governor of Iwate prefecture

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」 被災地 県知事 記者会見

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