2011年05月19日 16:30 〜 17:30 10階ホール
総会記念講演会 増田寛也 元総務相、前岩手県知事

会見メモ

増田寛也元総務相が日本記者クラブ総会記念講演で「国家の危機と政治、行政の役割-東日本大震災からの復興に向けて-」と題して話した。


冒頭、知事を務めた岩手県の惨状について思っていることを述べ、地元に伝わる「津波てんでんこ」の言い伝えを紹介した。

これは、津波があったら、てんでばらばらに自分の身を守るために高台に逃げろという意味。東北は家族や共同体の絆が強い地方だが、津波の時はそんなことを気にしていてはダメだと言う教えであるとして、これが今回も生死を分けた、と。

復旧・復興については、被災地の現場から見れば、それ以前の人命救助を優先する段階にあるという。避難所の被災者約12万人に自宅で不自由な生活を続けている人を加えれば、17万人ほどが避難生活をおくっていることになる。災害関連死で、自治体職員や被災者の自殺も出てきており、復興議論の前に避難所にいる人の命を救うのを最優先すべきである。そうしないと、復興構想会議の提案がいきてこない。これこそが政治が果たすべき大きな役割と考える、とも。


司会 日本記者クラブ理事長 吉田慎一(朝日新聞社)


増田寛也氏のオフィシャルサイト

http://www.h-masuda.net/


会見リポート

復興論議の前に「命を救え」

清水 真人 (日本経済新聞編集委員)

地方分権改革の旗を振った前岩手県知事。東日本大震災の被災地を頻繁に訪ねており、「現場の状況は刻々と変わっている」ときめ細かい対応を訴えた。日本生産性本部が立ち上げた民間版復興会議「日本創成会議」座長にも就任。この日は「在野のキーパーソン」と紹介された。


震災からふた月以上たっての講演だったが、最も力を込めたのは「避難者の命を救う手立てを早急に尽くしてほしい。現政権はそこに命運を懸けるべきだ」という点。「被災地では復興論議など到底できる状況ではない。『命を救う』を同時並行でやらないと、前に進めない」と現地と中央の温度差に警鐘を鳴らした。


政府の復興構想会議を「議論が密室で、経過を見せないので被災地に思いが伝わらない」と批判。「官僚との距離が遠く、抽象的な提言だと予算化に時間がかかる」と懸念した。

当面の緊急課題として指摘したのは「住まいを見つけること」と「仕事を創り出すこと」の二つだった。


「住まい」の柱である仮設住宅の建設をめぐっては「東北は9月には気温が10度を割り込む。お盆はギリギリの入居期限だ」と極力前倒しを要請した。単に「プレハブを建てる」だけでなく、通勤・通学への配慮や生活支援機能の確保などを求めた。


「仕事」の中核として「競争力のある三陸沖の水産業を早く復旧すべきだ」と訴えた。漁期などを考えれば、早期の2011年度第2次補正予算での手当てが必須と主張。避難所での炊事、洗濯などの軽作業も「役場の臨時職員と位置づけ、仕事として賃金を支払う」よう唱えた。


復興に向けた重要課題として挙げたのは海水に浸かった土地の問題だ。「公的な特別賃借権を設定し、自治体が一定期間、土地を借り上げて地代を支払う」スキームを提唱したうえで「公助でどこまで踏み込むのか、政権が腹を決める」よう迫った。


ゲスト / Guest

  • 増田寛也 / Hiroya MASUDA

    日本 / Japan

    元総務相、前岩手県知事 / Former minister of Internal Affairs and Communications, and former governor of Iwate Prefecture

研究テーマ:総会記念講演会

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