2011年04月28日 16:30 〜 17:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」山田健太 専修大学准教授

会見メモ

言論法・ジャーナリズム論を専門とし、BPOでは放送人権委員会委員などを務める山田健太専修大学准教授が、震災から一ヶ月までの全国紙と地方紙、計13紙の新聞紙面を分析した結果について述べた。

分析した紙面は、朝日、毎日、読売、産経、東京、東奥日報、デイリー東北、岩手日報、岩手日日、河北新報、福島民報、福島民友、いわき民報。被災地の新聞と全国紙のズレや、原発に対する各社のスタンスの違いなどについて報告した。


司会 日本記者クラブ企画委員 瀬川至朗


【資料】

レジュメ

http://www.jnpc.or.jp/files/2011/05/e9ca340400fdf5eae6a838bd28528ba7.pdf

紙面検証の方法

http://www.jnpc.or.jp/files/2011/05/d34f60f8548d4496b0c6493f173b9e69.pdf

グラフ

http://www.jnpc.or.jp/files/2011/05/7800e1e298e03fd963b616f759d256ab.pdf

参考資料

http://www.jnpc.or.jp/files/2011/05/a726ac64b6acb93ac5836e57fc735eae.pdf

専修大学の山田健太さんのページ

http://reach.acc.senshu-u.ac.jp/Nornir/search.do?type=v01&uid=1207320


会見リポート

重層的“震災報道” 紙面比較と分析

高橋 弘司 (毎日新聞・新聞研究本部)

未曾有の犠牲者と被害を出した東日本大震災。報道もまた、前例のない“総力戦”の様相だ。


山田氏は震災発生から1カ月にわたる、毎日、朝日、読売、産経、日経、東京の在京大手紙と、福島、宮城、岩手などの地元紙を対象とした比較・分析を明らかにした。


山田氏はまず、新聞・テレビが被災地に多数の記者を素早く派遣し、大量の情報を発し続けたという点で「伝統メディアは初期報道でその特性と経験を生かした」と評価。一方、ツイッターやグーグルなどの新興メディアが行方不明者の安否情報確認などで大きな威力を発揮したことは特徴的だと指摘した。


また、各紙とも「被災者に寄り添う報道」を標榜したが、発生後1カ月が経ち、在京紙に「復興」関連の記事が増える中、岩手の地元紙が「復興遠く」と見出しを掲げるなど、東京からの視点と現場の現実にずれが出始めていると指摘した。


山田氏は、福島第1原発事故の影響が依然、続いている現状を踏まえ、「メディアは監視能力が試されている」と厳しく問いかけた。特に放射能汚染に関する報道については「あいまいさやもたつき、推測がみられる」などと批判。たとえば食品に関する放射性物質の暫定基準値は誰がどのような根拠で決めたのかが不明だとし、政府の意思決定過程を明らかにする報道の必要性を訴えた。


さらに、地元紙「福島民報」が放射能の影響について、原子力安全委員会の見解とともに、国際原子力機関(IAEA)の見解も載せた例などを挙げ、日本と海外の関連機関で見解が異なる場合の報道のあり方について問題提起。少しでも情報がほしい被災者の立場から伝える地元メディアの存在意義が改めて浮き彫りになったとの認識を示した。


メディア関係者にとって、耳が痛くとも示唆に富む指摘が続いた。


ゲスト / Guest

  • 山田健太 / Kenta YAMADA

    日本 / Japan

    専修大学准教授 / Asso. Prof. Senshu University

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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