2011年04月08日 14:00 〜 15:30 10階ホール
研究会「中東民主化 サウジアラビア・バーレーン・イエメン」保坂修司

会見メモ

昨年末にチュニジアで始まった反政府・民主化運動は、その後エジプトを経て中東全域に広がっている。その中で、サウジアラビア、バーレーン、イエメンの動向について日本エネルギー経済研究所の保坂修司研究理事に聞いた。


バーレーンは確かにハリーファ氏が首相を40年務めており、議会も機能していないという非民主的独裁国家だ。しかし2月14日に始まったデモは平和的で国旗も掲げており、民主化を求めているかどうか疑問。ただ、治安部隊との衝突から緊張が高まった。その後、3月15日のサウジアラビアをはじめとした湾岸諸国からの軍による介入から潮目が変わり、体制に有利な状況になりつつあるのではないか。

イエメンは以前から経済的・社会的に六重苦の状態にあった。軍が割れて、中心人物が反体制派についたことでその命運は定まった。今やサーレフ大統領は条件闘争の段階にある。すでに湾岸諸国もアメリカもサーレフ大統領を見限っている。

サウジアラビアでは小さなデモは起きているが、全体として体制側はうまく立ち回っている。デモの要求は民主化ではなくシーア指導者の釈放であって、体制批判とは言えない。あくまでもサウド家が支配する現体制内での改革を求めている。


司会 日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日経新聞)

使用した資料
http://www.jnpc.or.jp/files/2011/04/c803b8824b1dbc5b24656e5570d67e36.pdf

日本エネルギー経済研究所のホームページ

http://eneken.ieej.or.jp/


会見リポート

クウェート的民主主義が落とし所

安倍 宏行 (フジテレビ解説委員)

日本が東日本大震災・原発事故報道で埋め尽くされている間、中東の混乱は着実に進行している。が、そのニュースが相対的に少ないがため、ほとんどの人はムバラク退陣以降、さして中東を気に留めることも少なくなっていた。


そうした中、氏はまず危機が起きている国の共通点として施政者の長い在位を挙げた。その上で2月からデモが激化し、危機的状況に陥っていたバーレーンを取り上げた。サウジアラビアの介入だけでなく、イランの介入もあったことを指摘、さらに国内のシーア派、スンニ派の分布と対立構図をわかりやすく説明した。また、混乱の行方として、体制側が反体制派の改革要求を取り入れ失業対策や住宅対策に乗り出したことから、危機を脱した、と分析した。


他の湾岸諸国では、オマーンに懸念材料があるものの、サウジアラビアやカタール、アラブ首長国連邦などには大きな動きはまだ出ていないとした。その上でクウェートを「最も民主的な国」と位置づけ、今後の湾岸諸国は「クウェート的民主主義が落とし所」とした。動画を駆使し、聴衆を飽きさせないプレゼンテーションは氏の真骨頂である。


さて、アメリカやヨーロッパが距離を置く中、湾岸諸国の民主化はもはや避けられない。その過程で原油相場はじわじわ値上がりを続けている。原子力発電の先行きが不透明な中、東京電力は当面火力発電に頼らざるを得ない。


中東の不安定化による資源価格の高騰は日本経済に重くのしかかろう。エネルギー基本法をどう見直すのか、エネルギー安全保障政策はどうあるべきなのか、政府は早急に検討すべきであろう。


ゲスト / Guest

  • 保坂修司 / Syuji HOSAKA

    日本 / Japan

    日本エネルギー経済研究所研究理事 / The Institute of Energy Economics, Japan

研究テーマ:中東民主化 サウジアラビア・バーレーン・イエメン

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