2011年01月19日 12:00 〜 13:30 10階ホール
シリーズ企画「地域深考」⑨ 井戸敏三 関西広域連合長・兵庫県知事 昼食会

会見メモ

発足したばかりの関西広域連合長として井戸敏三・兵庫県知事がシリーズ研究会「地域深考」⑨の昼食会で、関西広域連合のねらいや地方分権改革の取り組みについて語った。


≪「国の出先機関を廃止し、仕事・カネ・人は広域連合でまるごと引き受けたい」≫


井戸敏三知事は、関西の2府5県が2010年12月に設立した関西広域連合の狙いについて、関西全体の広域行政を担う責任主体として、国の権限移譲の受け皿となる、と説明。「地方の自己決定と自己責任」という原則を示した。機能として広域事務と国の出先機関からの事務移譲の2つをあげた。広域事務については防災、観光、環境、医療など7分野で参加府県が協力する体制を発足させた。出先機関を原則廃止し、権限や財源、職員を一括して関西広域連合に移譲するよう国に求める立場を鮮明にした。広域連合に国出先機関対策委員会をつくり、委員長の橋下徹大阪府知事には「突破力をいかしてもらいたい」と述べた。広域連合と道州制の違いについて「理想的な連邦主義の道州制ならいいが、憲法改正につながる議論が必要だ。都道府県をつぶし、国の総合事務所的な道州制を作るというなら、だましてかかる手法であり反対だ」と述べた。大阪や愛知でみられる地域政党について「二元代表制の片方である首長が政党を作るのは一元管理につながるのではないか」と疑問を投げかけた。

広域連合は地方自治法284条に規定される特別地方公共団体で、国に対し事務移譲を請求できる。


司会 日本記者クラブ理事 星野誠(TBSテレビ)

代表質問 日本記者クラブ企画委員 菅沼堅吾(東京新聞)


関西広域連合のホームページ

http://www.kouiki-kansai.jp/index.html



会見リポート

道州制のステップを否定

鎌田 司 (共同通信編集委員兼論説委員)

大阪、京都、兵庫など7府県が参加する「関西広域連合」が昨年12月発足した。異なる歴史や文化を背景にまとまりに欠け、「関西は一つ一つ」とやゆされることがある各府県の知事や議会を、持ち前の調整力と緻密な論理で束ね、都道府県レベルで全国初の広域連合発足にこぎ着けた。初代連合長を務める。「現行制度を活用して主体的につくったことが分権改革の突破口を開く」と意気込む。

関西広域連合の狙いは、国の権限の「受け皿」。国土交通省の近畿地方整備局など国の出先機関の一括移譲を迫る構想だ。広域連合内に国出先機関対策委員会を設置し、委員長に橋下徹大阪府知事が就任した。「広域連合をつくるまでは私が引っ張ってきたが、これからは橋下さんの突破力を生かしてほしい」と期待する。

関西広域連合には近隣の鳥取、徳島両県が参加する一方で、足元の奈良県が荒井正吾知事の反対で参加していない。「県の上の新たな組織は『屋上屋』」が荒井知事の言い分。また国側からは「奈良の不在は出先機関の一括移譲に支障がある」とけん制球も。

これに対し井戸氏は「奈良が欠けるのは大した問題ではない。広域連合で奈良の分も処理することが可能だ。防災訓練を、広域連合と奈良との共同で実施することまで嫌とは言わないでしょう」と、奈良県への配慮と将来の参加への期待をにじませる。

知事会の中では「道州制反対論者」で知られる。関西広域連合が道州制へのステップとみられることには「府県が事務を持ち寄って広域で仕事をするのが広域連合。道州制は法律で強制してブロックをつくるもので全く違うステップ」と強く否定した。

広域連合からさらに道州制の「関西州」を目指す橋下知事や、広域連合への参加を拒む荒井知事らをどう説得し足並みをそろえるか。調整役の出番は今後も続きそうだ。

ゲスト / Guest

  • 井戸敏三 / Toshizou IDO

    日本 / Japan

    関西広域連合長・兵庫県知事 / Head, Union of Kansai Governments, Governor, Hyogo Prefecture

研究テーマ:地域深考

研究会回数:0

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