2010年11月26日 13:30 〜 14:30 10階ホール
茂木守・全国農業協同組合中央会会長

会見メモ

全国農業協同組合中央会 茂木守会長が、農業の今後の展望や政府の進める環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について、全中の基本的な考えを語り、質疑応答では同席した冨士重夫専務理事も質問に答えた。


食料の自給率を向上させようとする農業基本計画と、例外なくすべての関税を撤廃するTPPは両立できないと、あらためてTPPに反対を表明した。


横浜で開かれたAPECではEPAやFTAばかりが注目を集めたことに触れ「貿易自由化よりも食の安全保障についてもっと話し合ってほしかった」とふりかえった。

また貿易交渉において「農業が足かせといわれるのは非常に残念」だとも述べた。


司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)


JA全中のホームページ

http://www.zenchu-ja.or.jp/


会見リポート

業界保護でない情報発信を

行友 弥 (毎日新聞編集委員)

「平成の開国」「自由貿易と農業再生は両立できる」といった抽象論が先行する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加問題。個人的には「それが果たして開国なのか」と疑問を抱き「自由化すれば農業は輸出産業になる」といった根拠薄弱な楽観論にも違和感を覚えていた。

半面、農家を大量動員し、鉢巻き姿で反対を叫ぶJA(農協)グループの運動スタイルにもあまり共感できなかった。「この姿が報じられるほど、世論はむしろTPP参加に傾くのではないか」と感じたほどだ。

その農協界トップの茂木守全国農業協同組合中央会(全中)会長がジャーナリストを前に何を語るか。大いに注目したが、やや消化不良気味に終わった印象は否めない。

米 豪との圧倒的な生産条件の差、品質格差があっても防ぎきれない輸入の増加、経済指標には表れない農業の多面的機能など、ポイントは押さえていたが、本来目 指すべき貿易秩序や農業保護の在り方、国内農業の体質強化へ向けたJAグループ自身の取り組みなど、もう少し踏み込んで語ってほしかったと思う。

質 疑で出た「農協は農家の敵」という厳しい指摘にも、単に「大半の農家が農協を支持している」「農協も改革に取り組んでいる」というだけでなく、農協がなぜ 農家にとって必要な存在なのか、現在の農協のどこに問題があり、どう改革しようとしているのかを、もう少し具体的に示すべきだったのではないか。

会 見には時間の制約もあり、これだけで判断するのは厳し過ぎるかもしれない。しかし、農業を守るにせよ、改革するにせよ、最も大切なのは消費者であり納税者 でもある国民全体の支持だろう。「開国か否か」といったキャンペーンに反論するには、単なる業界保護と受け止められない情報発信が求められる。

ゲスト / Guest

  • 茂木守 / Mamoru MOTEKI

    日本 / Japan

    全国農業協同組合中央会会長 / Japan Agricultural Co-operatives

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