2010年11月19日 13:30 〜 14:30 10階ホール
ツァヒャー・エルベグドルジ・モンゴル大統領

会見メモ

エルベグドルジ・モンゴル大統領が菅直人首相との首脳会談の前に記者会見し、レアアース開発など日本との協力について話した。


ジャーナリスト出身のエルベグドルジ大統領は宮中午餐会、国会演説、東大での講演、ビジネスセミナーなど訪日の日程を説明し、今回の訪日で日本との間で戦略的パートナーシップやEPA交渉開始に合意したと成果を語った。民主化20年を振り返り、①ユーラシア大陸では珍しく、政治と経済を同時に民主化・自由化し体制移行に成功②自由な選挙による平和な政権交代③1990年比で経済規模が18倍に成長――と総括した。資源国の中には外国からの資金流入で間違った道を選んだ国が多いと指摘し「正しい道とは、透明で開かれた形で、外国の資金から国民が効果を得ることだ。ノルウェーやオーストラリアのように、資源を有効に使い、国を豊かにしたい」と語った。日本が関心を示すレアアース開発では、①環境破壊がない②透明性がある③責任ある事業④原料輸出ではなく国内で付加価値をつける⑤中露以外の第三の国からの投資は外交バランス上、重要――などの条件を示し「日本が有利とはいっていないが、内容を考えれば実質的に日本が有利とわかるだろう」と日本を重視する姿勢を明らかにした。また、北朝鮮との関係に触れて「モンゴルは民主化まで、北朝鮮の現在の体制と似ていた。しかし民主化で勝ち取った価値は国際的、普遍的な価値であり、模範となる例だ。専制体制の国が自由化を求め、モンゴルの歴史から学びたいのならいつでも開かれている」と自信を語り「北朝鮮は一定の時期、いまの体制が続くだろうが、何らかの形で体制変革があると北朝鮮指導部との対話で感じている」と述べた。

司会 日本記者クラブ副理事長 宇治敏彦(東京新聞)

通訳 大束亮(駐日モンゴ大使館)


在モンゴル日本大使館のホームページ

http://www.mn.emb-japan.go.jp/index_j.htm


外務省ホームページのモンゴルのサイト

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/mongolia/index.html


会見リポート

民主化先導者の自負と自信

飯野 克彦 (日本経済新聞論説委員兼編集委員)

何と若々しい国家元首だろう。会見場に現れたエルベグドルジ大統領の第一印象だ。だが、質問に対する受け答えは堂々たるものだった。

人民革命党の一党独裁体制が崩壊してから、今年でちょうど20年。この間のモンゴルの歩みは平坦ではなかった。この20年をどう総括しているか、との問いへの答えには、民主化を先導してきた指導者らしい自負と自信がにじみ出ていた。

「広 いユーラシアのなかで、政治と経済を同時に民主化した成功例である」。こう語った大統領はさらに言葉を継いだ。「政治と経済を同時に改革するのはアジアの 道ではないと言われるが、モンゴルは小さな国ながら成功した」。証拠として、平和的な政権交代が繰り返されてきたことと、過去20年で経済規模が18倍に なったことをあげた。

確かにアジアでは、まず経済発展があって、そのあとに民主的な体制への移行が進むという例が目立つ。だからこそモンゴルは、アジアの他の国々が学ぶ模範となり得る──。こんな思いを感じ取れた。

一方で、率直な反省の言葉もあった。一度ならず「いろんな過ちや失敗をおかした」と語った。そのうえで、失敗から学び改善していく姿勢を強調した。

日本との関係では、資源開発を軸に経済協力への強い意欲を明らかにした。特に印象的だったのは日本企業への不満とも聞こえる言葉。「日本の企業は、他の国々の企業が動き出してから、ようやく動いてきた。最初に進出すべきだ」。

中国とロシアに挟まれたモンゴルが置かれた環境は、厳しい。だからこそ「第三の隣国」の一つとして日本に寄せる期待は大きい、と感じさせる記者会見だった。

ゲスト / Guest

  • ツァヒャー・エルベグドルジ / H.E. Mr. Tsakhia ELBEGDORJ

    モンゴル / Mongolia

    大統領 / President

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