2010年10月29日 00:00 〜 00:00 10階ホール
ジョゼフ・ダイス・国連総会議長

会見メモ

ダイス国連総会議長が記者会見し、安保理改革、核軍縮、生物多様性条約などの取り組みについて語った。

スイスの大統領、外相を務めたダイス国連総会議長は広島を訪問した経験を語り、被爆者との会話に感銘を受けたと述べた。安保理改­革について、常任理事国入りを希望する日本・ドイツ・インド・ブラジルのG4やアフリカ連合、さらに新しい常任理事国制度を提唱­する動きなどを紹介し、総会議長として話しあいの進展を加盟国に働きかける姿勢を示した。加盟国が個別の利益ではなく、共通の利­益を考えるよう促した。また、ソウルで開かれるG20と国連総会との橋渡し役を務めたいとの立場も示した。議長としての1年間の­任期中に、国連総会が取り組むテーマとして①ミレニアム開発目標②グリーンエコノミー③グローバル・ガバナンスの3点をあげた。
司会 日本記者クラブ企画委員 宮田一雄(産経新聞)
同時通訳 池田 薫、森岡幹予(サイマル・インターナショナル)


国連広報センターのホームページ(日本語)
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国連のホームページ
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※同時通訳です。日本語は左チャンネル、英語は右チャンネル
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会見リポート

実直な交渉のプロ 広島も訪問

篠田 航一 (毎日新聞外信部)

正直な人だ。「国連総会議長というのは、あくまで進行役。私の立場では特に何も言えない」と前置きしながらも、いつのまにか身振り手振りを交え、国際社会を束ねる大役の難しさ、そして本音を口にしてしまう。「総会議長の任期は1年。これではとても様々な問題を解決できるとは思えない」。思わず漏らした言葉には、進展が見られない国連改革などへのいら立ちも感じられた。

指摘も率直だ。「武器禁輸」など日本の平和・軍縮政策について見解を聞かれた際も、「日本は軍縮のリーダーだが、残念ながらこの分野では、他の国々はあまり関わってこない」と嘆き、国際社会の関心がまだ高くない状況に懸念を示した。

元スイス大統領。外相時代はスイスの国連加盟に東奔西走した人物だ。中立国の伝統にこだわり、国連の枠外でスイスの独自性保持を主張する勢力も多かったが、粘り強く説得を続けた。結局、国民投票を経てスイスは02年に国連加盟を果たす。なるほど、ただの「進行役」などではない。相当タフな交渉人で、その手腕を国連という大舞台で発揮したくてうずうずしているに違いない。

会見中、頻繁に口にした言葉は「ヒロシマ」だった。名古屋で開催中だった国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)出席後、広島を訪問。原爆資料館を見学し、被爆者とも直接話をした。「あんなひどい目にあったけど、今もヒロシマに住んでいます。私たちがこの街を建て直したんです」。被爆者の女性のこの言葉に打たれたという。

「核なき世界に向け、行動していく」。実直な交渉のプロが語ると、この言葉は重みを持つ。国連総会議長の大役は「たった1年」かもしれないが、世界は毎日、休むことなく課題に直面している。実績あるその手腕への期待は大きい。


ゲスト / Guest

  • ジョゼフ・ダイス / Joseph Deiss

    国連 / UN

    国連総会議長 / President of the 65thsession of the United Nations General Assembly

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