2010年10月15日 00:00 〜 00:00
宮本雄二・前駐中国大使「日米中」

会見メモ

2010年7月まで4年間、北京で対中外交の先頭に立った宮本雄二・前駐中国大使がシリーズ研究会「日米中」⑪で、最近の日中関­係を分析し、中国とのつきあい方を語った。

宮本雄二・前大使は、中国の国土、民族、歴史を語り、中国理解の難しさと複雑さを強調した。その上で、4年間の大使在任中の日中­関係を振り返った。特に2008年5月の胡錦濤主席と福田康夫首相の首脳会談で発表された日中共同声明を詳しく説明し、「戦略的­互恵関係」の重要性を解説した。日本で中国に対する国論が一致しない現状を指摘し、「(外交官は)エネルギーの7割を国内で消耗­し、外では3割しか使えない」「ふにゃふにゃした国の外交はふにゃふにゃ外交になる」と述べた。
司会 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)


在中国日本大使館のホームページ
http://www.cn.emb-japan.go.jp/index_j.htm
在日本中国大使館のホームページ
http://www.fmprc.gov.cn/ce/cejp/jpn/

会見リポート

複雑多面、中国理解の難しさ

服部 健司 (時事通信外信部長)

「ふにゃふにゃした国が外交をやっても、ふにゃふにゃした外交になる」「国家というものは一本背骨が入っていなければならない」

翌日の新聞には、尖閣諸島沖の漁船衝突事件で菅政権の対応を批判したと解釈できる発言が取り上げられた。記者として飛びつきたくなる「おいしい」部分だが、この人の硬骨ぶりを印象づける場面でもあった。

日本で国論が一致しないため、「7割くらい国内でエネルギーを使い果たす」と対中外交の苦渋も吐露。国民のコンセンサスがあれば「もっと納得してもらえる外交ができる」と語った。この嘆きの最大の理解者は、もしかすると中国外交官かもしれない。

双方とも相手側を正確に把握できず、ともすれば否定的側面にばかり目が行く。そしてどちらも「自分のことをわかってくれない」と不満を募らせる。そんな中で相互理解と関係進展を図るのは確かに至難の技だと、中国報道にかかわると痛感する。

宮本氏は4年3カ月の駐中国大使の大任を果たし、7月に帰国した。渦中の日中関係が聞けるとあって会場は満員。期待にたがわず、示唆に富む所見が次々披露された。

特に強調されたのは中国が「極めて複雑で多面的な実体」であること。「だから複合的視野でとらえねばならない。日本スタンダードで眺めると失敗する」と、中国理解の難しさを力説した。単純すぎる中国観や乱暴な俗論の横行に危機感をにじませたように聞こえた。

中国は歴史問題で答えを出した。日本の反省とお詫びをこれ以上求めない。戦後日本も「平和国家」と評価した。そう言い切る一方、「中国社会でこの認識は普遍的なものになっていない」とし、日中関係は当然ながら波乱含みだと語った。

講演の翌16日から中国で反日デモが相次ぎ、この予言の正しさが早速証明された。

ゲスト / Guest

  • 宮本雄二 / Yuji MIYAMOTO

    日本 / Japan

    前駐中国大使 / Former Ambassador to China

研究テーマ:日米中

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