2010年08月25日 00:00 〜 00:00
斎藤十朗・元参院議長

会見メモ

シリーズ研究会「参議院」②で、斎藤十朗元参議院議長が「参議院に期待される役割と責任――抑制・均衡・補完」のテーマで話し、­質問に答えた。

参議院議員を1972年から2004年まで6期32年務め、1995年から2000年まで参議院議長として参院改革に取り組んだ­斎藤十朗さんは、参議院の現状について「政局の府に成り下がっている」と憂えた。「参議院の数が足らないから連立を組むという楽­な道を選んだからだ。一瀉千里に衆参両院で法律を通すというのでは、参議院は必要ない。衆議院で過半数をとるために連立内閣を作­るべきだ」と述べた。2010年参院選後の「ねじれ国会」について「ねじれはしょっちゅうあることだ。法案ごとに参議院で修正協­議を進めるべきだ」と参議院の各党間が信頼関係を作ることを求めた。メディアに対しても「衆議院を取材して参議院の記事を書くの­ではなく、参議院を取材してほしい。各党参議院議員会長の討論会を行ってはどうか」とよびかけた。
司会 日本記者クラブ企画委員 田崎史郎(時事通信)

参議院のホームページ
http://www.sangiin.go.jp/


会見リポート

現状への危機感と叱責

川上 高志 (共同通信編集委員)

現役時代と変わらない穏やかな語り口の中にプライドを漂わせる「ミスター参議院」。強く印象に残ったのは「参院はこれ以上、改革の余地はない」と言い切ったことだ。

議長として様々な改革に取り組んだ斎藤氏だけに、まだいくつものアイデアを持ち、披露されるのではと思っていた。だが制度の改革には限界があると指摘。「舞台で踊る役者がしっかりしてくれなければ駄目だ」と、参院の現状に危機感を示し、「政局の具に成り下がっている」と現役議員を厳しく叱責した。

参院で過半数の議席を持たないことを理由に、今の民主党政権は当たり前のように連立を組んだ。「参院でも一瀉千里、一気通貫で結論を出す一番楽な道を選んだ」ために「二院制の意味がなくなり、参院が政権奪取のための先兵になっている」。

では参院を再生させる手掛かりはあるのか。まさに「ねじれ国会」だという。参院で法案を修正するため「くたびれ果てるまで議論」する姿を示すことで国民の理解が得られ、「抑制・均衡・補完」という役割を果たせる。そのためにまず民主党が頭を低くして各党に協力を求めること、自民党は民主党に苦労させられた与党時代の「報復」をしないこと。「参院で各党間の信頼関係を構築することが一番大事だ」と強調した。

しかし役者を育てる方策は難しい。斎藤氏の現役時代から参院の「政党化」は進んでいた。7月の参院選では衆院落選組のくら替えが相次ぎ、参院の独自性はさらに厳しい状況に向かっている。

斎藤氏は選挙制度改革や衆参の機能分化の必要性を指摘し、憲法改正論議の中で取り組むよう求めた。また「メディアは参院を取材してほしい」と注文もつけた。参院議員の意識改革が進み、独自性を取り戻し、発信力を増す「好循環」が生まれるのか。重要な提案と受け止めた。


ゲスト / Guest

  • 斎藤十朗 / Jyuro Saito

    日本 / Japan

    元参院議長 / Former President of the House of Councillors

研究テーマ:参議院

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