2010年07月09日 00:00 〜 00:00
ルイス・アウグスト・デ・カストロ・ネーベス・駐日ブラジル大使

会見メモ

経済成長が続くブラジルのカストロ・ネーべス大使が記者会見し、台頭するブラジルの現状と今後の見通しを語った。
駐日ブラジル大使館のホームページ
http://www.brasemb.or.jp/index.html

「G8はもはや不治の病にかかり忘れた方がいい。G20こそ、現在の世界を代表している」
1990年代前半までブラジル経済は高インフレに苦しんだが、1994年の新通貨レアル導入などの改革で、安定を取り戻し高成長­を続けている。大使は「日本の90年代は失われた10年だったが、ブラジルは貧困層を経済に包摂する社会政策をとり、所得だけで­はなく富を生み出した」と説明した。「ブラジルの一人当たりGDPは2015年には世界5位になるだろう。公的債務のGDP比率­は43%で日本の5分の1だ。人口の4分の3は中産階級で所得分配の改善が進んでいる。不平等が拡大する中国の成長とは違う」と­述べ、同じBRICSと呼ばれる中国との違いを強調した。非関税障壁があり対日輸出の拡大ができないと不満を述べ、特にエタノー­ルの対日輸出に取り組む考えを示した。
G8とブラジルがメンバーのG20について質問が出ると、G8は機能不全と批判し、G20を「多極化世界に適応している機構だ」­と称賛した。ブラジル訪問のビザをとるのに日数がかかりすぎる、との質問には、「ブラジル人が日本の総領事館でビザをとる方が難­しい」と切り返した。自信に満ちたスピーチと受け答えが目立った。
司会:会田弘継・日本記者クラブ企画委員(共同通信) 
通訳:池田薫

冒頭スピーチ(英文)
http://www.jnpc.or.jp/files/opdf/458.pdf


会見リポート

自信満々のブラジル外交

岩城 聡 (日本経済新聞前サンパウロ支局長)

「G8(主要8カ国)はすでに死んだ。その〝葬式〟はダラダラと行われるだろう」──。かつて、ブラジルのアモリン外相が語ったという言葉を、ネーベス氏の会見を聞きながら思い出してしまった。

米国発の金融危機は、先進国がひざをつき合わせたところで、世界経済のガイドラインを提示できない現状を露呈した。ネーベス氏いわく「G8よりG20が今の世界をより正確に代弁している。G8は忘れ去った方がいい」。2015年には国内総生産(GDP)は2兆ドルを超え、世界のトップ5入りするとも言われる。「南米の雄」から、世界のメジャープレーヤーになってきたブラジルの外交は今、自信満々だ。

一方で、同じBRICsのメンバーである中国へのライバル意識が見え隠れ。「中国が『和諧社会』を公言するなら、社会の不平等感を解決すべき」「世界の中でのパワーが増えれば責任も増える。中国はそれに見合った振る舞いを」……。直近の中国大使時代から、東アジア地域の複雑な歴史や文化を知るにつけ、思うところも多いのだろう。

中国離任にあたり、いくつかの選択肢から自ら日本を選んだと語っていた。だからこそ、日本へのいらだちも大きい。

ブラジルと中国の貿易額は2004年に比べ4倍増の400億ドルに膨らんだ。しかし、対日貿易額はいまだ100億ドルで、「この額は小さすぎるし、満足もしていない」。しかも、日本市場の参入を阻む「保護主義的な非関税障壁は日本にとってはマイナスだ」と踏み込んだ。

150万人以上の日系人を抱えるブラジル。「だから、ブラジルには日本人の血が流れている」とはネーベス氏の台詞だ。さて、こんな大使のラブコールに、日本政府や企業はどう応えるのか? まずは、12月に落札者が決まる「ブラジル新幹線」に注目したい。


ゲスト / Guest

  • ルイス・アウグスト・デ・カストロ・ネーベス / Luiz Augusto de Castro Neves

    ブラジル / Brazil

    駐日大使 / Ambassador of Brazil

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