2010年07月09日 00:00 〜 00:00
山崎直子・宇宙飛行士

会見メモ

スペースシャトル「ディスカバリー」の宇宙の旅から帰った宇宙飛行士、山崎直子さんが昼食会で、宇宙の経験とこれからの夢を語っ­た。
宇宙航空研究開発機構のホームページ
http://www.jaxa.jp/

「無重力には一瞬で慣れるが、(帰還後)地球の重力に慣れるのに時間がかかった」
山崎さんは用意したDVDの記録映像を説明しながら、スペースシャトルと国際宇宙ステーション(ISS)の旅を振り返った。宇宙­の衣食住は基本的に地上と同じようにできる。宇宙食の種類も増え、キンメダイの煮つけも食べた。ただ、洗濯はできないので服は2­,3日着ると廃棄する。「歯磨きのあとは、飲み込まなければならないんです」とさまざまな体験を話した。
質疑応答では、日本の宇宙政策から「宇宙で演奏した琴の音程が低くなったのはなぜか」まで多くの質問が出た。米国のシャトルは来­年2月で退役する。「日本が運用できる有人飛行船が持てたらいい」と日本の取り組み拡大を期待した。宇宙から地球をみて「かけが­えのない惑星」と改めて感じたという。クラブのゲストブックには「瑠璃色の地球も花も宇宙の子」と一句を書いた。
司会:井田由美・日本記者クラブ企画委員(日本テレビ放送網) 
質問:菅沼堅吾・日本記者クラブ企画委員(中日新聞・東京新聞)


会見リポート

銀河の果てまでの夢

大牟田 透 (朝日新聞科学医療エディター)

「地球が想像以上に美しかったことに驚きました。3次元の丸い地球、直視できないほど強烈な太陽の光など、強烈な体験でした。大気層の輝くベールに包まれた地球自体が、一つの生命体に見えました」

4月、米スペースシャトル・ディスカバリーで国際宇宙ステーション(ISS)に向かい、15日余の宇宙飛行を体験した。ミッションスペシャリストとしてロボットアームの操作などを担当。ISS内を漂う水玉に桜の塩漬けを浮かべた「お花見」を披露したり、野口聡一飛行士の笛に合わせてミニ琴で「さくらさくら」を奏でたりもした。

宇宙で唯一困ったのは「歯磨き」だった。「はき出せないので歯磨き粉を飲み込む。最初はすごく抵抗がありました」と語り、笑いを誘った。無重力には一瞬で慣れたが、地球帰還時は頭を重く感じ、重力に順応しなおす大変さを感じたという。

7年前、産休中の山崎さんに週1回のコラム連載をお願いしたことがある。最中にシャトル・コロンビアの空中分解事故が起きた。飛行再開のめどが立たない不安があっただろうが、直後の回のタイトルは「それでも私は飛び立つ」。その後も難局に立ち向かう同僚飛行士の姿を描きながら、「今の真摯な努力は無駄にはならないはず。そうしながら組織も人も少しずつ強くなっていくのだと思っています」とつづった。

今回の昼食会でも、宇宙予算削減やシャトル退役などをめぐる厳しい質問に真正面から答えた。国内政治では最近とんと見かけぬ「真摯な努力」であった。

原点は、子どものころの宇宙への憧れ。どこまで遠くへ行ってみたいかと尋ねたら「ゆくゆくは光速を超えて、銀河の果てまで行ける、ということにまだどこかで憧れています」という答えが返ってきた。


ゲスト / Guest

  • 山崎直子 / Naoko YAMAZAKI

    日本 / Japan

    宇宙飛行士 / Astronaut

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