2010年06月11日 00:00 〜 00:00
長尾眞・国立国会図書館館長

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会見リポート

電子図書館の現状と将来

相澤 与剛 (元時事通信出版部長)

これまで何度かお話を伺ったことがある。「電子情報通信学会会長、情報処理学会会長、京大総長を歴任、専攻は画像処理・パターン認識」といった肩書き、研究分野から推して、難解な専門用語が飛び交う取材を覚悟してしまう。ところがさにあらず。ソフトで話は実に分かりやすい。

09年度の補正予算において、国立国会図書館では2年間で図書・資料90万冊のデジタル化計画に127億円の予算が計上された。これを可能にしたのは2つの法改正である。

一つは09年6月の著作権法の改正。国立国会図書館は資料保存の目的で権利者の「許諾なく」デジタル化が可能となった。いま一つは、国会図書館法の改正。国、地方公共団体、国立大学、独立行政法人などのウェブサイトを許諾なく収集することが可能となったのである。このデジタル化計画の延長線上には、すべての国民が同等のサービスを、「いつでも、どこでも」受けられる電子図書館システムがあるという。

デジタル化の流れは世界の趨勢と言える。しかし一方で、デジタル・アーカイブという、新たな情報の収集・整理、あるいは価値付けとかの行為が誰かに独占される危険性はないのかという指摘が様々になされている。それは、官であっても、あるいは先頭をひた走るグーグルのような私企業であっても困る。

民主主義社会は、多様な価値観の存在を前提とした社会である。特にグーグルの「全世界の情報を集め、体系化して世界中の人々の利用に供する…」といった考え方には強い抵抗が既に出始めている。仏や独政府は、グーグルに対抗してそれぞれの文化財のデジタル化に国費を投入する考えを表明している。会場からもこの点に関しての懸念が集中した。

氏はこうしたグーグル批判に同調される。「自国の知的資源は自国で守り、積極的に発信する。これは永続性が最も大切であり、公的機関がなすべきものである」と。

ゲスト / Guest

  • 長尾眞 / Makoto NAGAO

    日本 / Japan

    国立国会図書館館長 / President, National Diet Library

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