2010年03月08日 00:00 〜 00:00
ゴードン・クロビッツ・「ジャーナリズム・オンライン」共同創設者

会見メモ

インターネット・ニューズサイトの課金代行会社「ジャーナリズム・オンライン」の共同創設者、ゴードン・クロビッツさん(Gor­don Crovitz, Co-Founder, Journalism Online)が2010年3月8日、研究会「世界の新聞・メディア」④で新聞のネット課金の具体的な方法について話した。
ジャーナリズム・オンラインのサイト
http://www.journalismonline.com
クロビッツさんはThe Paid Model Online And Future Funding of Newsと題し、ネットのジャーナリズムにだれがどのように費用を払い、どのように徴収するかのモデルを説明した。Freemi­um strategyという造語を使い、ニューズサイトを無料Freeで読む読者と、有料premium pricingで読む読者を組み合わせ、ネットの広告収入も確保するシステムを提案した。Journalism Onlineはパブリッシャーにサービスを提供する会社。Press+と呼ぶ共通プラットフォームを使えば、読者は単一のアカウ­ントを持つだけで、提携する新聞のウェブサイトのニュースを有料で読めるようになる。北米で約1300のパブリッシャーと提携し­、近く使用を始める予定で、ネット課金のさまざまな方法を列挙した。サイトにアクセスする読者の10%はニュースにおカネを払う­と推定し、現在の活字媒体収入に追加してオンライン収入をめざす時であり、並存が可能だと呼びかけた。読者のloyality(­忠誠心)をデバイス(携帯電話やキンドル、i-Padなど電子読書端末)からニュースのブランドに取り戻す、と意気込みを語った­。

司会:瀬川至朗企画委員(毎日新聞出身)


会見リポート

Print needs to change

阪井 宏 (北海道新聞メディア委員)

インターネットの時代をどう生き抜くか。世界中の新聞社が、この難題に頭を痛めている。最大のネックは、ネット上では大半の新聞記事が無料である、という現実だ。そんな折、タイミングよく来日し、ネット課金での提携を呼びかけた。

米経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」の元発行人。3年前に同社を去り、課金サービスを代行するベンチャーを設立した。

新聞はどうやって持続可能なビジネスモデルを描けばよいのか。そう問題提起したあと、解を示した。「デジタルの独自コンテンツを充実させ、無料と有料のコンテンツを組み合わせることだ」

多くの来場者はやや拍子抜けしたに違いない。無料と有料を組み合わせるアイデアは国内でも既に広く知られており、驚きはない。

そんな空気を映してか、質疑ではやや消極的な質問が目立った。「日本語の壁はどうするのか」「利用者の10%が課金することを前提とするのは楽観的すぎないか」…。

個々の問いに答えたあと、逆に提案した。「まずは飛び込んで欲しい。飛び込んで、何ができるかを考えてはどうか」。リスクを先送りしている場合ではない。金を払って読んでくれる読者が10%もいないのなら、その記事のほうを改めるべきだ。そんなメッセージに聞こえた。

米国では百年以上の歴史を誇る地方紙が次々と倒れている。大勢のジャーナリストが活動の場を失い、路頭に迷っている。そんな現状に接している側から見ると、いかにものんびりした対応に映るのだろう。

「Webの時代に、紙の新聞はどうなると思うか」と問われ、こう答えた。「紙の将来に、私は楽観的だ。ただし条件がある。デジタル化の時代に沿って、適切に変貌することができれば、の話だ」。そして言った。「Print needs to change」。静かだが、重みのある一言だった。

ゲスト / Guest

  • ゴードン・クロビッツ / Gor­don Crovitz,

    アメリカ / USA

    「ジャーナリズム・オンライン」共同創設者 / Co-Founder, Journalism Online

研究テーマ:世界の新聞・メディア

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