2010年03月31日 00:00 〜 00:00
紀陸孝・日本年金機構理事長

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会見リポート

労務エキスパートの手腕に期待

左山 政樹 (読売新聞社会保障部次長)

政権交代の一因になったといわれる年金記録漏れ問題。旧社会保険庁は解体されて今年1月、民間の日本年金機構に組織替えされた。

旧社保庁では、厚生労働省のキャリア、本庁採用職員、地方採用職員という三層構造が職員の意識を停滞させていた。記録漏れなど数々の不祥事を引き起こした遠因といわれる。冒頭の概要説明で「各都道府県の社会保険事務局ごとに対応がバラバラ。下部組織の社会保険事務所は人事異動もない。他の事務局、事務所のことを知らず、本庁の指示も徹底しなかった」と、かつての労使関係の問題点を率直に認めた。

その後の質疑に入っても労使問題に質問が集まった。というのも、紀陸さんは、32歳で“財界労務部”の旧日経連に入って労務畑を歩き続けたその筋の専門家。初代理事長への登用は人事管理の手腕を買われてのことと思われるからだ。

新組織の年金機構でも、正職員、准職員、契約職員らが混在するうえ、旧社保庁からの転籍組と民間出身の新規採用組の正職員が入り交じっている。新たな三層、四層構造が生まれているともいえるだろう。意思疎通に問題は生じないのか。

「厚労省からも130人ほど出向で来ている。部長クラスは10人ほど。現場を知らないで年金改革などはできないわけで、多少の交流はやむをえないと考えている。民間になれば労使ともに責任が生じるため、労働組合の意識も変わってきた。職員の異動は全国規模で行えるようになっている」。いたって肯定的だ。

312人の年金事務所長のうち、51人が民間出身者。あいさつの励行、朝礼、名刺渡し、日報の記入などを心がけている、という。今も二つの労組があるが、「話し合えば解決できる。現時点では厳しい要求も出ていません」。とりあえず“出帆”には成功したということか。
 

ゲスト / Guest

  • 紀陸孝 / Takashi KIRIKU

    日本 / Japan

    日本年金機構理事長 / the Board Chairman of Japan Pension Service

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