2009年12月16日 00:00 〜 00:00
国分良成・慶応大学教授

会見メモ

国分良成(こくぶん りょうせい)慶応義塾大学教授が、2009年12月16日、シリーズ研究会「日米中」④で「中国と『日米中』」と題して話し、質­問に答えた。
中国の政治体制、米中関係、日中関係のそれぞれの「安定度」を分析し、日米中の現状と今後をわかりやすく、鮮やかな切り口で解説­した。
国分教授はまず、20世紀中国の一貫した課題として「富強」と「中華統一」をあげ、中国共産党の意思を国家の制度を通して反映さ­せる「党国体制」という権威主義体制を指摘した。また、中国が絶えず意識してきたのが日本であり、日米同盟は中国の暴走を止め、­中国が国際社会に入り台頭するのを結果として助けてきたのだから、「中国は日米同盟を必要としている」と説明した。
さらに「中国の最大の弱みは民主化していない点だ。所得再分配による利益の平準化ができるか」と今後の問題点を解説した。
司会:坂東賢治企画委員(毎日)


会見リポート

米中G2時代 正念場の鳩山外交

飯田 和郎 (毎日新聞外信部)

中国で「ポスト胡錦濤」の最有力候補とされる習近平国家副主席の訪日、外交慣例を破る形で実現した習副主席と天皇陛下の会見、さらに鳩山政権が米軍普天間飛行場の移転先決定を先送りする中、まさにタイムリーな研究会となった。国分氏はまず、これらを取り上げ「米国からみると、日本は米国との関係を後退させた一方、中国を厚遇した。日本は相当大きな岐路に立っている」と断じ、鳩山政権の外交手法に疑問を呈した。

その中国は今後、どこへ進むのか。多くの人々が抱く疑問に、国分氏は「体制転換は起こり得ない」と予測。理由として①30年を経た改革・開放の成功②共産党組織の強化──を挙げるとともに「中国自身も政治改革をやらなければいけないと思いつつ、このような国際的な経済情勢ではできない。今後は権力の交代期に入る」ことも加え、共産党の指導が続くとの見通しを示した。

「米中G2論」が今、日米でさかんだ。国分氏は「日本が世界的な役割を果たせなくなってきた。実態としてG2になっていく」と分析し、中台関係改善、米中の人的ネットワークの広がり、反テロ協力での結びつきを米中協調の具体例に挙げた。対日姿勢については「20世紀の中国は一貫して日本を意識したが、変わってきているのではないか。日本との関係は落ち着きをみせるのではないか」と読む。

もっとも、中国に不安要素がないわけではない。国分氏は鄧小平が遺した「韜光養晦(力を隠し、時を待つ)」の言葉を例に、「中国国内で主流派はこの教えを踏襲するが、いつかは頭をもたげる時が来る。それがナショナリズムに凝り固まったものであれば、問題だ」と警鐘を鳴らす。

現実的利益で結ばれる米中とは対照的に、不安定感が募る日米関係、摩擦の多い日中関係の行方は、新たな「日米中の三角形」を測る上でも重みを増していく。

ゲスト / Guest

  • 国分良成 / Ryosei KOKUBUN

    日本 / Japan

    慶応大学教授 / Professor,Keio University

研究テーマ:日米中

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