2009年11月27日 00:00 〜 00:00
谷福丸・元衆議院事務総長

申し込み締め切り


会見リポート

政府方針はまず国会で発信を

清水 真人 (日本経済新聞編集委員)

衆院事務局に40年以上、在籍した国会の生き字引から、知らない話をいろいろ、お聞きすることができた。

例えば衆院本会議場。1933年に放火され、ヒトラーが独裁を固める契機となったドイツの旧国会議事堂の議場と作りがそっくりだそうだ。議長席や演壇が議員席をはるかに見下ろす高さで「闊達な議論をするにはふさわしくない」が本音。でも裏側はコンクリートの塊で、そう簡単には改造できないのだと言う。

国会の最大の問題は「政権交代が長らくなかったこと」だと喝破した。「与野党が入れ替わったらこんなことはやらない、という相互理解がないまま戦術が固定化した」と振り返った。政権交代して迎えた臨時国会でも与党の強行採決や野党の審議拒否といった不毛な場面が目立ったが、「政権交代に習熟すれば、国会も本来の機能を発揮できる」と期待する。

第2の問題は「議院内閣制に三権分立の思想をはめ込んだ厄介さ」だと指摘した。立法府の多数派が首相を選び、その首相が内閣を組んで行政府の官僚を統御する。この議院内閣制の仕組みから「政治主導など言わずもがなだ」と強調。ベテラン議員さえ「官僚支配」を言い募る風潮を「上司が部下の悪口を言うのは恥ずかしい。米国流に立法と行政を対立させて考えすぎだ」とたしなめた。

この論理からは民主党の小沢一郎幹事長が唱える官僚答弁の禁止も当然となる。憲法解釈を担ってきた内閣法制局長官についても「法制局は法案起草といういわば内々の仕事をする職人。表に出てきて答弁するのは……」と小沢氏に軍配を上げた。

国会改革のカギとして「重要な政府の方針などはまず国会で発信する慣行を確立し、情報センターとする」よう声を大にした。そのため、党首討論を定例化し、予算委員会に順繰りで「各大臣の審議日」を設けるよう提言。実質審議日数を増やし、会議の持ち方も工夫せよと訴えた。
 

ゲスト / Guest

  • 谷福丸 / Hukumaru TANI

    日本 / Japan

    元衆議院事務総長 / Former Secretary-General,the House of Representatives

ページのTOPへ