2009年11月26日 00:00 〜 00:00
田中伸男・IEA事務局長

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会見リポート

日本は技術移転で貢献を

柳原美砂子 (毎日新聞経済部)

国際エネルギー機関(IEA、本部・パリ)が11月に公表した「世界エネルギー見通し2009」を報告するため、一時帰国して会見した。2013年以降の温室効果ガス削減の新たな枠組みを話し合う「国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)」を前に、「エネルギーと表裏一体の関係」(田中氏)にある気候変動問題について、示唆に富んだ会見となった。

IEAの報告書は、深刻な温暖化被害を防ぐためのシナリオ実現に必要な20年の排出削減目標として、米国は「05年比18%減」、日本は「90年比10%減」と試算している。折しも会見前日の11月25日、米国が「05年比17%減」の目標を表明。田中氏は「前向きな表明で、全体の議論を進める上で重要だ。シナリオに沿った数字だが、17%削減がすべて国内で達成されるのかどうか注視したい」と述べた。

一方、鳩山政権が掲げる「90年比25%減」の目標については、「意欲的だが、公平性からいけば10%減でいい」と指摘。10%を超える分は排出権購入や途上国への技術移転により、世界の削減に貢献すべきだとの考えを示した。

また、2030年までの温暖化対策として、家庭へのエコカー(環境対応車)導入などに10・5兆ドルの追加投資が必要になるものの、それによって運輸や建物などのエネルギーコストが8・6兆ドル節約できると報告した。田中氏は「投資資金をどうやって融通するか、民間資金が立ち上がるしくみをどう作るかが最大の課題だ」と強調した。

昨秋の金融・経済危機以降、世界の化石燃料の需要は足踏み状態となり、「気候変動対策には好機」と田中氏は言う。COP15は、法的拘束力のある新たな議定書の採択は絶望的な情勢だが、来年の新議定書採択につながる政治合意がまとまるかどうか注目したい。
 

ゲスト / Guest

  • 田中伸男 / Nobuo TANAKA

    日本 / Japan

    国際エネルギー機関(IEA)事務局長 / Secretary-General,IEA

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