2009年11月05日 00:00 〜 00:00
アレクサンデル・ストゥブ・フィンランド外相

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会見リポート

加盟国外相はEU外相の“特使”に

脇阪 紀行 (朝日新聞論説委員)

北欧諸国の中で最も欧州統合に熱心なのがフィンランド。1995年にスウェーデンとともに欧州連合(EU)に加盟し、単一通貨ユーロを取り入れた。その国の外相に昨年春就任したストゥブ氏からも欧州統合推進論が次々に飛び出した。

「冷戦から20年たち、中国やインドなどの台頭で世界は一極化から多極化へ進んでいる。欧州がまとまらないと世界の動きに遅れをとってしまう」と、EUのリスボン条約批准実現を強く歓迎する。

携帯電話のノキアに代表される情報技術(IT)革命を進展させ、成長の足場にできたのも、EU経済との一体化や技術基準の広がりが背景にあるから当然の発言ではある。リスボン条約によって新たに創設される外交安保上級代表(外相)についても「中東やアフガニスタン、イランなどの課題解決へのEU外交を進められる」との期待を語った。

ただ、驚いたのは、各加盟国の外相の今後の立場について「EU外交が本格化すれば、外相の役割は小さくなるのが望ましい」と語ったことだ。各国外相のメンツはどうなるのかと心配になるが、「各国外相はEU外相の特使として働けばいいのでは」とさらりと言ってのけた。

41歳と若い。20年前、ベルリンの壁が崩壊した時は米国の大学に留学中だったという。その後、英国の大学で博士号をとり、プロディ元欧州委員長の顧問を経て、欧州議会議員や、EU官僚の養成機関である欧州大学院大学教授を務めた。

日本とフィンランドはともに少子高齢化に伴う年金問題や不況、気候変動といった問題を抱えていると指摘する。「お国の教育水準の高さは日本では評判ですよ」と会見後、水を向けると、「評判に気を良くして怠け者になってはいけません」と自らを戒めるように語った。
 

ゲスト / Guest

  • アレクサンデル・ストゥブ / Alexander Stubb

    フィンランド / Finland

    外相 / Minister of Foreign Affairs

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