2009年10月05日 00:00 〜 00:00
茂木崇・東京工芸大学専任講師


会見リポート

デジタルを抱きしめる米紙

瀬川 至朗 (元毎日新聞論説委員)

「世界の新聞・メディア」研究会がスタートした。背景には「ジャーナリズムの危機」があり、マスメディアとしての新聞・テレビの未来はあるのか、という問題意識がある。

研究会の第1回ゲストとして茂木さんをお呼びした。研究者というよりジャーナリストと呼んでもおかしくない、茂木さんの現場力に魅力を感じたからである。タイムズスクエアをこよなく愛し、年に2~3回、ニューヨークに出かけ、新聞、雑誌、テレビ、広告、音楽、ブロードウェーといった各産業の取材と調査をする。今年で12年目という。

茂木さんはスピーチのなかで、デジタル時代における新聞社の方向性を①ネット上での課金、②ブランディングをやり直した上での減量経営、③寄付の呼びかけとNPOへの転換──の3点に整理し、それぞれ最新の動向を交えて説明した。ネット課金では、課金代行会社である「ジャーナリズム・オンライン」設立の話題。寄付の観点からは、サイト・ブログ寄付システムの「カチングル」の構想を紹介してくれた。

いずれも興味津々だが、やはり、ニューヨークタイムズ(NYT)紙の動向が気になる。NYT紙のペーパー版読者は100万人だが、オンライン版読者は世界に2000万人いる。しかし、「ネットニュースは無料」という認識がはびこる現状で、「収入なき読者増」というジレンマにあえぐ。デジタル技術がもたらす「破壊的イノベーション」を、NYT紙がどう克服していくのか、注目したい。

先はまだ見えない。それでも、米国のメディアはデジタルを「抱きしめ(embrace)」ようとしている。問題は日本だ。デジタルを避けようとする姿勢が依然目立つ。茂木さんは「宅配で守られることの害が大きくなっている」と指摘した。米メディアの経営戦略は3カ月で一変する。いずれかの機会に、茂木さんの話をまたお聞きしたい。

ゲスト / Guest

  • 茂木崇 / Takashi MOGI

    日本 / Japan

    東京工芸大学専任講師 / Full-Time Teacher,Tokyo Polytechnic University

研究テーマ:世界の新聞・メディア

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