2009年09月10日 00:00 〜 00:00
湯浅誠・反貧困ネットワーク事務局長

申し込み締め切り


会見リポート

関心は尊重につながる

後藤 千恵 (NHK解説委員)

「政治が人間の手触りを忘れている」。湯浅さんの言葉は、いつも強く心に響く。この日も、具体的なデータや事例を交えつつ、力のある発言が続いた。

まず、新政権に何を期待するか。「今回の選挙では、“経済成長をすれば生活がよくなるという話はうんざりだ”、という人たちが投票した。この人たちに家計の立ち直りをどう実感してもらうかだ」

具体的に求めたのが、貧困率の測定だ。「日本政府は、貧困率の数字を認めていない。だから、出発点も目標数も定まらず、子どもの貧困が増え続けている」。同じように子どもの貧困が問題になったイギリスでは、「90年代から当時のブレア首相が、子どもの貧困を04年までに4分の3、10年までに半分、25年までに撲滅と、25年計画で減らし続けている」。

「命だ、生活だ、というのなら、それに沿った政治を。ダメなら、この政権でもダメだといわざるを得ない。次の選挙で国民の審判が下るだろう」

ただ、政治に任せるだけではないところが、派遣村などの活動を通じて、政治や行政を動かしてきた湯浅さんだ。「私は現場の活動家。お手並み拝見というわけにはいかない。私たち国民も、よりよくなるよう、働きかけていくしかない」

ゲスト帳に残した言葉は、「関心は尊重につながる」。「見えないことが無視につながり、逆に関心は尊重につながる」というアメリカのジャーナリストの言葉からの引用だ。今、日本で何が起きているのか、関心を高めていくためのメディアの役割も、改めて問われている。

いつものように、冷静に理路整然と話し終えた湯浅さんだが、 “活動家”としてホームレスの人たちに話しかけるときには、「そろそろ、行きましょっかあ~!」。飲み仲間のおじさんと話しているかのような優しい語り口とまなざしに変わる。本物だなと思う。

ゲスト / Guest

  • 湯浅誠 / Makoto YUASA

    日本 / Japan

    反貧困ネットワーク事務局長 / Secretary-General, Anti-Poverty Campaign

研究テーマ:総選挙後の日本

ページのTOPへ