2009年09月07日 00:00 〜 00:00
岡本行夫・外交評論家

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会見リポート

戦略なき国家には深刻な結果が

久保田るり子 (産経新聞政治部編集委員)

鳩山政権発足を十日後に控えて、岡本氏が「祝意とともに、私の期待と懸念」を語った。

滑り出しの鳩山外交を総覧して岡本氏は憂慮を深めているのではないか。「鳩山論文」で米国の知日派の疑心を買った日米関係はますます不透明になった。閣僚からの同盟の根幹に関わる「見直し」「修正」要求は止まらない。首相の国連演説は「友愛」「架け橋」と甘い言葉が印象的で、マニフェスト(選挙公約)遵守の原則論が目立った。

講演で岡本氏の話に通底したのは、国家が弱体化すればモノをいう力は失われ、理想主義の自己陶酔のツケは国民が支払わされてきたというリアリズムだ。世界に発信された「米国主導の市場原理主義に世界が翻弄された」とのNGOを彷彿させるような発想や、いかにも野党的な「選挙用の安保政策」は、そうそうに修正すべきだと説いていた。インド洋上の給油中止で「テロとの戦い」の戦線から離脱するのであれば、日米関係への影響だけでなく欧州からの批判も覚悟しなければならない。地位協定、米軍再編、核持ち込み密約など、日本側の一方的な主張や要求をアピールすることが果たして「対等な日米関係」なのか、との指摘である。

外洋艦隊建設など着々と軍事力を強化する中国の前に、日本は自国の安全保障を何を持って担保するのかとの問いに民主党マニフェストは答えていない。韓国の左派は活動を始めている。アジアの反日イデオロギーは手強い。歴史認識は踏み絵に使われるだろうし、新政権の幹部は過去にさまざまな「言質」をとられてきた。「軸が変わるとはそういうことだ」との民主党の声が聞こえそうだが、岡本氏は「戦略なき国家には深刻な結果がもたらされる」と語った。

幕は上がったばかり。しかし、攻守激論で野党自民党は大丈夫か。

ゲスト / Guest

  • 岡本行夫 / Yukio OKAMOTO

    日本 / Japan

    外交評論家 / Diplomatic Observer

研究テーマ:総選挙後の日本

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