2009年06月15日 00:00 〜 00:00
西崎文子・成蹊大学教授

申し込み締め切り


会見リポート

オバマ広島訪問へ最大のチャンス

滝野 隆浩 (毎日新聞社会部編集委員)

オバマ米大統領が「核なき世界」をうたった4月5日のプラハ演説は各方面に衝撃を与えた。広島・長崎の被爆地からは歓迎の声が挙がったし、論壇や各種学会では「オバマ提言をどう受け止めるか」という話題で持ちきりである。ただ、同じ日に北朝鮮が弾道ミサイル発射実験、続けて2回目の核実験を強行したことで、核軍縮は、特に日本周辺の北東アジアでは、複雑な連立方程式を解く作業になってしまった。

米外交史が専門の西崎先生の研究会はまさに時宜にかなった企画で、会場はほぼ満席状態だった。先生の分析によると、プラハ演説は単に理想論を語っているのではなく、ロシアとの新たな戦略兵器削減に関する交渉や包括的核実験禁止条約の批准など、米国がとるべき具体的な道筋を示していた。そして何より、核軍拡を冷戦という歴史の文脈で位置づけたことが際だっていたという。保有国こそが核軍縮の先頭に立つべきなのだ。それが「道義的責任」というオバマ大統領の言葉だった。

また「核は使われない兵器で、抑止論は洗練された戦略とみなされてきた。それは広島・長崎を忘れさせる構造になっていた」と先生は顧みる。ところが、「大統領があえて『原爆投下』に触れたことで、被爆が現実のものであることをよみがえらせた。核は使われないことはない、抑止論は持ちこたえられなくなると示したのだ」とした。質疑で、大統領の広島訪問の可能性を聞かれこう答えた。「最大のチャンス。彼はそこで彼の歴史認識と核時代に関するメッセージを語るはず」

私もプラハ演説を読み返してみた。時代が変わるのかもしれないという予感が漂う。じっとしてられなくなった。「オバマはナイーブ。北の核開発に対処できない」という批判は確かに根強い。しかし、冷笑的な姿勢だけは取りたくないと思った。

ゲスト / Guest

  • 西崎文子 / Fumiko NISHIZAKI

    日本 / Japan

    成蹊大学教授 / Professor, Seikei University

研究テーマ:オバマのアメリカ

ページのTOPへ