2009年05月19日 00:00 〜 00:00
上坂昇・桜美林大学教授

申し込み締め切り

会見リポート

宗教右派からみた米国の変化

会田 弘継 (共同通信編集委員室次長)

もっとも早い時期からアメリカの宗教右派勢力に注目してきた人だ。25年も前に『現代アメリカの保守勢力─政治を動かす宗教右翼たち』(ヨルダン社)という本を書いている。超大国を独特の視点で見つめてきた。近著『神の国アメリカの論理─宗教右派によるイスラエル支援、中絶・同性結婚の否認』(明石書店)は各紙書評で高い評価を得た。

その上坂教授を迎えての「オバマ研究会」は、活発な質疑応答となった。依然、宗教右派と呼ばれる勢力への関心が高いことを示しているようだ。

上坂教授によれば、宗教右派には世代交代が起きている。ジェリー・フォルウェル、パット・ロバートソンといった70年代から活躍してきた指導者らが死去したり、表舞台から去ったりし、代わって若手指導者らが登場。若い宗教右派の人たちの関心領域も変わってきた。

これまでは人工妊娠中絶や同性愛結婚が主な関心の対象だったが、最近では環境や貧困問題への関心が高まっているという。彼らは、神が創造した大自然を破壊する行為、困窮に陥った隣人を放置する行為は信仰上、許してはならないと考える。

上坂教授の説明には「宗教左派」いう言葉も出てきた。貧困問題などを軸に、社会正義の実現を強く求めていくような熱心なキリスト教徒は、そう呼ぶのがふさわしいのだろう。オバマ大統領はそうした人々を取り込み、その力を借りて貧困撲滅などの政策実現を図ろうとしているという。革新的なキリスト教徒たちの力を借りていくために、ホワイトハウスに専任の担当者も置いている。

オバマ大統領自身も信仰生活で「生まれ変わり」(ボーンアゲイン)的な体験があるという。考えてみれば、カーター元大統領も信仰のあつい人だった。アメリカ政治を考える時は民主・共和いずれの政権でも、宗教問題を避けて通れないようだ。

ゲスト / Guest

  • 上坂昇 / Noboru KOSAKA

    日本 / Japan

    桜美林大学教授 / Professor, J.F.Oberlin University

研究テーマ:オバマのアメリカ

ページのTOPへ