2009年05月14日 00:00 〜 00:00
ローレンス・キャノン・カナダ外相

申し込み締め切り

会見リポート

外相はPRマン

伊奈 久喜 (日本経済新聞論説副委員長)

ある国の首脳や外相が外国の首都を訪問し、その国のナショナルプレスクラブで会見する。彼らにとっては自国とその外交政策をPRする場である。PR能力が問われる。

質問する記者たちも、視野の広さ、方向、深さなどの様々な角度から対外的関心のありようを実は試験されている。2国間問題だけ、あるいは特定の問題だけに質問が集中すれば、それがその国のプレスの視野の実態を示す。先方はそう見る。

この相互作用の観点に立てば、キャノン外相の会見は、理想型に近かったように思えた。修好80年を迎えた日加関係を述べ、外交政策に話題を転じ、北極とアフガニスタンの2点に優先順位を置いていると説明した。PRマンを見事に演じた。

日加関係には新聞の一面を飾るような懸案はない。だから集まった記者の数もそれほど多くはなかった。それがかえって良かった。アフガニスタン、G8、ミャンマー(ビルマ)、ロシアと幅広い質問が出た。

アウン・サン・スー・チーさんに異変が起きているミャンマーに対する回答を避けたのは残念だったが、G20との関連で問われているG8のあり方については「アーキテクチャー(構造物)よりも問題を前進させるのが重要」と述べた。枠組み論議が好きな日本のメディアに対する間接批判とも聞こえた。

カナダの外相だから、こういう雰囲気の会見が可能だったのだろう。もしアメリカの国務長官だったら、記者の数も多く、質問者は実はあらかじめ決まっていて……といった形式主義に陥る危険があった。最近の当クラブでの大物会見を見ているとそんな気がする。最後はカナダに関係ない話でした。

ゲスト / Guest

  • ローレンス・キャノン / Lawrence Cannon

    カナダ / Canada

    外相 / Minister of Foreign Affairs

ページのTOPへ