2009年04月07日 00:00 〜 00:00
神馬征峰・東京大学教授/渋谷健司・東京大学大学院教授

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会見リポート

知恵と声を生かした保健戦略

宮田 一雄 (産経新聞編集局編集委員)

昨年7月の北海道洞爺湖サミットの重要課題だったグローバルヘルス(国際保健)に関し「具体的に何をすべきか」を継続して検討してきた「国際保健の課題と日本の貢献」研究会(通称・武見研究会)が今年1月、検討結果をまとめた提言書「保健システム強化に向けたグローバル・アクション」を日本政府に提出した。保健人材、保健財政、保健情報の3分野の提言のうち、保健人材を神馬教授(写真=右)、保健情報を渋谷教授が執筆している。
 
大学では研究室が隣り合わせのお2人の専門は、神馬教授がコミュニティーの保健、渋谷教授が保健政策。会見もミクロとマクロの視点から国際保健を複眼的に捉えるまたとない機会となった。同じ国際保健でも70~80年代のインターナショナルヘルスが「南の問題を北が解決してあげる」といったニュアンスなのに対し、21世紀に入って頻繁に使われているグローバルヘルスは北と南の共通点に注目し、「途上国の問題が先進国の問題でもある」との視点が強く意識されているという。
 
会見ではそうした説明の後、触媒としてのG8の役割、資金・人材・知識などを確保するための革新的方法の模索、人間の安全保障の観点の重要性、途上国の自助努力を促す学習プロセスなど、提言のポイントを紹介していただいた。
 
提言書は英医学専門誌「ランセット」に掲載され、途上国の開発援助や保健基盤強化に取り組む世界の専門家に注目されている。金融危機下の日本の戦略に関して言えば、資金貢献はもちろん重要だが、同時に「金がなくても知恵と声があれば世界の評価はありうる」と渋谷教授が指摘されたのが印象的だった。

ゲスト / Guest

  • 神馬征峰 / Masamine Jinba

    日本 / Japan

    東京大学教授 / Professor, University of Tokyo

  • 渋谷健司 / Kenji Shibuya

    日本 / Japan

    東京大学大学院教授 / Graduate school of University of Tokyo

研究テーマ:国家戦略としてのグローバルヘルス

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