2009年03月16日 00:00 〜 00:00
中山俊宏・津田塾大学准教授「オバマのアメリカ」5

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会見リポート

ブレアに近いオバマ外交

近藤 順夫 (共同通信編集局次長)

1月20日の就任以来、大型景気対策法の成立やイラク駐留米軍の撤退方針を矢継ぎ早に打ち出し「猛烈なスピード」(CBSテレビ)でブッシュ前政権からの政策転換を図るオバマ米大統領。人気は依然衰えず、日本でもさまざまなレベルで「オバマ研究」が盛んだ。

オバマ氏は、尊敬するリンカーンやケネディという偉大な先輩たちを意識した演説や手法で、よく両者と比較される。では指導者としての発想は実際、誰に似ているのか─。中山氏は当クラブの「オバ研」で「トニー・ブレア(前英首相)の外交思想に極めて近い」と指摘した。

ブレア氏は首相だった1999年4月、米シカゴで行った外交演説で、世界には国家の主権にさえぎられて放置されたままの問題が多いが、相互依存が進む時代では国境を越えて対応しなければならない責任が国際社会にあると訴えた。

オバマ氏も、相互依存性の密度が濃くなった世界において米国が果たすべき役割を強調している。中山氏は「外交ではブレア・ドクトリンの理念を引き継ごうとしているのではないか」と語る。

イラク戦争では、積極参戦し結果的に任期途中での首相退陣に追い込まれたブレア氏と違い、オバマ氏は戦争反対の立場を貫いた。だが反戦主義者というわけでなく、テロとの戦いの主戦場と位置付けるアフガニスタンには部隊増派を決めている。だが、タリバン復活のアフガン問題をどうやって乗り切るのか。アフガンは「オバマのベトナム」(米誌ニューズウィーク)になるのではないかとの声も出始めている。

英労働党改革と経済再建を実行したブレア氏。変革を掲げ、米国の再生と責任を訴えるオバマ氏。ブレア氏はイラクでつまずいた。オバマ大統領が理念通りに外交を推進できるのか、ウオッチしたい。

ゲスト / Guest

  • 中山俊宏 / Toshihiro NAKAYAMA

    日本 / Japan

    津田塾大学准教授 / Associate Professor, Tsuda College

研究テーマ:オバマのアメリカ

研究会回数:5

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