2009年02月25日 00:00 〜 00:00
松井豊・筑波大学教授/福岡欣治・静岡文化芸術大学准教授

申し込み締め切り

会見リポート

記者8人に1人がPTSDの恐れ

中川 和之 (時事通信防災リスクマネジメントWeb編集長)

記者は、大惨事の現場で取材をし、多くの人に状況を伝えるのが仕事である。伝え手である記者は、直接の被災者ではない。だが、現場取材を通じて二次的に惨事に巻き込まれた結果、新聞記者の8人に1人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)の疑いがある惨事ストレスに悩んだ経験があるという。

これは、消防職員のPTSDを研究してきた松井筑波大教授らが、新聞や放送局の記者・カメラマン753人を対象に行った調査の結果だ。松井教授は、消防職員の調査から推定すると、記者160人に1人が完全に病気になっていてもおかしくないという。

現場の取材で、凄惨な状況を眼前にしただけでなく、苦しんでいる被害者に話を聞くことが記者のストレスになる。取材相手に傷を付けないように神経を使うが、デスクからは特ダネを強いられる。他社に抜かれて憂鬱になり、飲酒量も増える。「記事が荒れる」と答えたデスクもいた。

調査結果で示された証言は、現場経験のある記者なら、多くがよく理解できる内容だ。これまでの取材・報道経験で「衝撃を受けた事案はない」と回答した人は2割以下にとどまる。当日の会場でも、自分の取材経験を語ってから質問をする方が少なくなかった。

だが、記者たちが自らの弱さを認めることになるストレスに向き合うのは簡単ではない。

松井教授は「同僚や上司、他社の記者と話をすることが支えになった人が多い」と分析。「一番のストレスケアは記事を書くこと。記者が良い仕事をするために支え合う力を組織の中に作ることが大切」と指摘した。この言葉で、若いときに記者クラブで世話になった他社の先輩記者の顔が浮かんだ。



ゲスト / Guest

  • 松井豊 / Yutaka MATSUI

    日本 / Japan

    筑波大学教授 / Professor, University of Tsukuba

  • 福岡欣治 / Yoshiharu FUKUOKA

    日本 / Japan

    静岡文化芸術大学准教授 / Associate Professor, Shizuoka University of Art and Culture

研究テーマ:ジャーナリストの惨事ストレス

ページのTOPへ