2009年02月04日 00:00 〜 00:00
湯浅誠・「年越し派遣村」村長・自立生活サポートセンターもやい事務局長「雇用問題」1

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会見リポート

3月までにさらなる大波が

磯崎 由美 (毎日新聞生活報道センター)

年末年始、霞が関の日比谷公園に現れた「年越し派遣村」の村長を務め、一躍時の人に。だがこれまでの活動は地道だ。野宿者支援を始めたのは95年。「それ以降、日本で貧困が減ったことは一度もない。今は高度成長以前のような広がりを感じる」と危機感を口にする。

雇用危機で露呈するセーフティーネットの機能不全。雇用保険に加入していても、寮を追われ住所を失えば失業給付が出ない。社会福祉協議会のつなぎ融資も門戸は狭く、生活保護は申請さえ拒まれる。「航空写真で住宅街を俯瞰すると、確かに道がある。でも歩いてみるとボコボコ。それをいかに航空写真しか見ていない人たちに分かってもらい、歩ける道にしていくか」が喫緊の課題という。

派遣村の人々の生活保護受給には批判も受けたが、「アパートに入って早く働き、納税してもらうほうがいい。『甘やかすな』と言っていると、将来に膨大なツケを残す」と、社会にとっても自立支援が有益であることに理解を求めた。また、労働条件を選べない人が増えると劣悪な仕事に求職者が殺到し、さらに劣悪な仕事が横行する「労働市場の破壊」が進むと警告。「NOと言える労働者」を増やすことが市場の質を保つ、との指摘は新鮮だった。

丁寧に、明快に語られるセーフティーネット論が説得力を持って響くのは、支援経験が培った自負ゆえだろう。今後は「救貧対策」から「防貧対策」にシフトすべきとし、「中収入中支出型」社会を提言する。

政府・与党の緊急雇用対策には一定の評価を惜しまない。その一方でこうも言った。「3月までにさらなる大波が来る。その時また私たちが派遣村をやることになったら、政治家は失格だと思っています」。

ゲスト / Guest

  • 湯浅誠 / Makoto YUASA

    日本 / Japan

    「年越し派遣村」村長・自立生活サポートセンターもやい事務局長 / Chief, Toshikosi-Hakwn-mura; Secretary-General, Moyai

研究テーマ:雇用問題

研究会回数:1

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