2009年01月19日 00:00 〜 00:00
池尾和人・慶應義塾大学教授「2009年経済見通し」

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会見リポート

世界的不均衡が原因

岡田 晃 (テレビ東京出身)

新年経済見通しシリーズのトップバッターは、金融論の専門家で論客の池尾和人氏。エコノミストのような“予想”を期待した人にとってはやや肩透かしだったが、学者らしい理論的な分析で明快な解説を聞くことができた。

テーマは「米国金融危機と日本経済の見通し」。池尾氏がまず強調したのは、世界的な不均衡が金融危機の根本原因だという点だった。米国の経常赤字拡大の一方で、アジアやほとんどの新興国などで過剰貯蓄となり、それら黒字国の積み上がったドル資金の運用先として米国の住宅資産が供給されたのが、問題の始まりだった。したがって、よく言われるように金融が実体経済を振り回したのではなく、実体経済が金融をゆがめたのだと池尾氏は言う。

このことは、今後の見通しを厳しいものにする。今回の金融危機によって、米国への投資と米国の経常赤字は縮小せざるを得なくなる。世界的不均衡の是正が進むことは好ましいことのように見えるが、その調整過程で世界経済は縮小均衡に陥る可能性が高い。日本経済にとって、このインパクトはかなり深刻。日本は輸出主導型の成長パターンはとれなくなり、「失われた15年」に逆戻りする懸念があるというのが、池尾氏の見立てだ。

あらためて金融危機の根深さを再認識させられた。だからこそ、政策が重要になってくる。日本経済がこの危機を乗り切るためには、短期的な景気対策や金融政策だけではなく、実力を向上させて成長していけるような経済構造に転換することが求められている。

ゲスト / Guest

  • 池尾和人 / Kazuhito Ikeo

    日本 / Japan

    慶応義塾大学教授 / Professor of the Keio University

研究テーマ:2009年経済見通し

研究会回数:0

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