2009年01月29日 00:00 〜 00:00
上岡伸雄・学習院大学教授「オバマのアメリカ」2

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会見リポート

“建国の理念”響く就任演説

國枝すみれ (毎日新聞夕刊編集部)

「見出しどころがなく、感動的でなかった」という声もあり、評価が二分したオバマ米大統領の就任演説について、「現実の厳しさを認識し真摯に取り組もうとしているから。浮ついたところがなく、誠実な気持ちが伝わる良い演説」とプラスに評価した。

オバマ演説の特徴は「アメリカという言葉の使い方」と指摘した。政治家は自国のことは「私たちの国」「この国」、呼びかける場合は「親愛なる市民のみなさん」と言うのが一般的だが、オバマは「アメリカ、後戻りはできない」という具合に、「アメリカ」を多用した。しかも「寛容なアメリカ」「寛大なアメリカ」などという場合には、不定冠詞のAをつけた。こうすることで、ブッシュ政権の米国は違うかもしれないが、ケニア移民の父と白人の母を持つ自分を受け入れる米国こそが「本来の、そして建国の理念が実現されたアメリカなのだ」と国民に思わせることに成功したのだという。

理念の体現である自分が当選したとき「アメリカは変わった」と完了形で演説したものの、本当に自由や平等が実現できるかどうかはこれからだ。独立を一方的に宣言したはいいが英国との戦争に勝たねばならず、合衆国になるには南北戦争を経なければならなかった苦難の歴史に、我が身を重ねたのだろう。演説の最後は、建国の父、ジョージ・ワシントンが1776年12月、英国の傭兵であった独軍と闘うため厳寒のデラウェア川を渡る際、兵士に読むことを求めたトーマス・ペインの「アメリカン・クライシス」という文章の引用だった。

米国の政治の特徴は「理念先行型で、誰もが立ち戻れる建国の理念があること」という教授の説明に、どうしても日本の閉そくした政治状況と比較してしまう聴衆からため息も漏れた。

ゲスト / Guest

  • 上岡伸雄 / Nobuo KAMIOKA

    日本 / Japan

    学習院大学教授 / Professor, Gakusyuin University

研究テーマ:オバマのアメリカ

研究会回数:2

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