2008年12月26日 00:00 〜 00:00
葛西敬之・JR東海会長

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会見リポート

リニア「1県1駅は常識的」

左山 政樹 (読売新聞編集委員)

東京─名古屋間290キロメートルを超電導磁気浮上方式で走らせる中央リニア新幹線。5兆1000億円をつぎこむ建設事業がJR東海の自己負担で着手される。

東海道新幹線が開業したのは、東京五輪が開かれた1964年のことだ。時速200キロで突っ走って東京─新大阪間を3時間強で結んだ新幹線は、私を含めた昭和30年代生まれの鉄道ファンにとって、まさに「夢の超特急」だった。多くの夢を運んだ「0系」車両は昨年、山陽新幹線からも姿を消した。その直後の昼食会だけに聞き逃せないと思われた。

なぜリニアが必要なのか。葛西会長によれば、新幹線による輸送力増強が限界に達したということらしい。現在は最高時速270キロで、運行本数は1時間に12本。最新車両の「N700系」を投入しても東京─新大阪間を5分しか短縮できていない。最大15本まで詰め込む余力はある。しかし、N700系で最高時速300キロの運用に切り替えても、加減速に必要な距離が延びるだけで、効率的な時間短縮にはつながらないようだ。

鉄道施設の老朽化に加えて、遠からず東海大地震に襲われる恐れも指摘されている。長期にわたる運休を強いられれば、国内経済に与える影響は深刻だ。早い時期にバイパスを新設しておくことも必要ではある。

ルート確定にあたり、沿線自治体との駆け引きも予想される。「1県1駅は常識的」としながら、講演では、「迂回させれば工事費が問題」と直線ルートの妥当性をにじませた。

「リニアは陸上輸送の革命。21世紀の国民的な夢を実現させたい」と力説したが、開業予定の2025年には人口減少も進んでいる。果たして見込み通りの需要が生まれるのかどうか。質疑で確かめたいとも思ったが、講演時間が尽きていた。

ゲスト / Guest

  • 葛西敬之 / Takayuki Kasai

    日本 / Japan

    JR東海会長 / Chairman, Central Japan Railway Company (JR Central)

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