2008年12月10日 00:00 〜 00:00
斉藤惇・東京証券取引所社長

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会見リポート

市場経済を否定するな

大鹿 靖明 (朝日新聞出向社員(アエラ記者))

金融への規制を緩めてきたレーガン、サッチャー以来の路線を30年ぶりに見直さないといけない。ヘッジファンドや投資銀行に集った原子物理学者たちが、金融機関の幹部や監督官庁でも分からない、複雑な商品やシステムを編み出してきた。その報酬は目先の業績に連動し、巨額収入を得て「やり逃げ」する。

このように平易な言葉で語る斉藤氏の解説を、「フムフム」と受け止める向きは多いだろう。そもそも、豪勢に遊んでいたキリギリスを、額に汗してきた私たち働きアリが笑う番である。今回の米国発の金融危機に、そう溜飲を下げる人は多いに違いない。最近のマスコミ論調もそうした風潮を反映して、米国型金融資本主義や市場万能経済の崩壊をはやし立てるものが目につく。

ところが、市場の元締めである斉藤氏は、極端へふれがちな流れに棹を差すことを忘れない。しなければならないことは「行き過ぎ」を是正すべきであって、人為的に市場を管理すべきではないという。

「ヒトラーもスターリンも毛沢東もみんな失敗しました。人為的に価格を統制してもうまくゆきません。いろいろと欠点はあるが、金融資本主義が崩壊するとは思えません」

金融工学も証券化も、そのもの自体が悪いのではない。要は、その使い方に問題があった、と見る。

「まさか、いまからマルクスに戻る人はいないでしょう。市場主義経済を否定すべきではありません」

野村証券で市場と向き合い、産業再生機構では企業再生にかかわってきた。経験に裏打ちされた言葉には説得力がある。格差解消を御旗に市場経済への批判を強める大手メディアもあるが、問われるべきはその定見のなさや浅薄さだろう。



ゲスト / Guest

  • 斉藤惇 / Atsushi Saito

    日本 / Japan

    東京証券取引所社長 / President & CEO , Tokyo Stock Exchange Group, Inc.

研究テーマ:金融危機

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