2008年12月02日 00:00 〜 00:00
前田弘毅・大阪大学世界言語研究センター特任助教「ユーラシア」2

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会見リポート

愛憎から憎しみ一辺倒へ

飯島 一孝 (毎日新聞出身)

「常に呑み込まれない辺境」「(国際社会が)注目して見捨ててきた地域」。ロシア・イラン・トルコの地域大国にはさまれ、しぶとく生き抜いてきた南カフカス3カ国をこう表現した。日本人になじみが薄く、脚光を浴びる機会が少ない地域だが「特徴をつかんだ、うまい表現だな」と感心した。

08年8月8日の北京五輪開会式に合わせたように始まったロシア・グルジア「戦争」は、どちらが先に手を出したかもはっきりしないなど、まだ不明な点が多い。だが、ポスト・ポスト冷戦の始まりを告げる世界史的な転換点ともみられていて、さらなる調査・研究が待たれているテーマである。

「バラ革命」5周年を機にグルジアに1週間滞在、帰国したばかりの氏は、その時の見聞を交えながら、まずグルジアの政治から文化までパワーポイントを使って詳しく説明した。後半では、「米国とロシアの代理戦争」という見方では捉えきれない民族の特殊性や大国との長い確執の歴史を分かりやすく解き明かした。

中でも強く印象に残ったのは、グルジアとロシアの関係が「愛憎」から「憎しみ一辺倒」に変わったという指摘だ。グルジアワインを好み、最大の輸入国だったロシアが、今も輸入を禁止せざるを得ないのは、お互いに不幸としか言いようがない。

その一方の原因を作ったサーカシビリ大統領を「ポスト・ソ連の申し子」と表現し、民族への愛情が強すぎてロシアとの戦争に突き進んだと解説した。

さらに、今回の紛争では欧米とロシアの陣取り合戦が大義なき戦争をもたらしたと分析、紛争防止の国際的メカニズムを作る必要があると結論付けた。若い研究者の熱意が伝わってきた研究会だった。

ゲスト / Guest

  • 前田弘毅 / Hiroki MAEDA

    日本 / Japan

    大阪大学世界言語研究センター特任助教 / Special appointment, Assistant professor, Research Center for World Languages, Osaka University

研究テーマ:ユーラシア

研究会回数:2

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