2008年11月14日 00:00 〜 00:00
田中伸男・国際エネルギー機関事務局長

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会見リポート

投資促進と温暖化対策

堀 義男 (時事通信産業部長)

投資促進と地球温暖化対策という二つの課題がエネルギー分野に存在する─。2008年版「世界エネルギー見通し」を踏まえ、田中氏が今回行った記者会見のポイントだろう。

田中氏は金融危機に端を発する世界的な景気後退の下、油田開発投資が先細りするリスクを指摘。その上で、中国やインド、中東諸国などの需要増加基調は変わらず、既存油田の老朽化に伴う生産減退も加速するなどを理由に、投資の手を抜けば供給不足に将来陥るとの懸念を示した。

実際、上流部門での投資額が大幅に伸びているのは、高コストの深海油田や既存油田の生産減退に対処するため。供給・価格両面での安定化を図るには、開発コストの安い中東諸国で生産拡大を実現するのが望ましい。

田中氏は「(生産面で)依存度が高まるOPECでいかに投資をしていくかが、中長期で最も重要な政策上の論点だ」との考えを示した。

田中氏が他方で挙げたのが、エネルギー分野から温室効果ガス排出量をいかに削減するかだ。08年版見通しでは、温室効果ガスのCO2換算濃度を①550ppm②450ppm─で長期安定化(前者は世界の気温上昇が約3度、後者は約2度)させる政策に関し、エネルギー面から検討。いずれも低炭素技術の開発・導入、省エネ性の高いエネルギー関連設備投資をはじめ様々な施策が必要になるとしている。

田中氏とともに会見に臨んだIEAチーフエコノミストのビロル氏も「各国政府は現在の経済危機を言い訳にしてはいけない」と強調。先進・途上国、エネルギー消費・産出国問わず、国際的な協調対応を迫った。

来年末には「ポスト京都議定書」を決める国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が開催される。550・450政策をきっかけに、温暖化ガス削減をめぐる国際的な議論が前進し、COP15成功につながるよう期待する。

ゲスト / Guest

  • 田中伸男 / Nobuo TANAKA

    日本 / Japan

    国際エネルギー機関事務局長 / Secretary-General, IEA

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