2008年06月10日 00:00 〜 00:00
飯尾潤・政策研究大学院大学教授

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会見リポート

当たり前の議院内閣制を

山崎 剛 (共同通信論説委員)

著書『日本の統治構造』の吉野作造賞受賞が朝刊で報じられ、翌日は福田康夫首相の問責決議が参院で可決されるという絶妙のタイミングで、流動化する現実政治への示唆に富む分析を聞くことができた。

飯尾氏は「日本型議院内閣制の総合的再検討」を中心テーマに、国会や内閣、政党、政治家、官僚制、選挙などに幅広く目配りしつつ、日本の政治構造を論じた。「日本型議院内閣制(官僚内閣制)は役割を終えた。日本型ではない、当たり前の議院内閣制に戻し、発展させる時期に来ている」。これが問題意識だ。

分析タームは「政府・与党二元体制」と「省庁代表制」。いずれも飯尾氏の造語だ。前者は、本来一体化しているはずの内閣と与党が分離し、時に「使い分け」されて政策を動かしてきた状況を指し、後者は各省庁が社会動向を一定程度反映して官僚内閣制の民主的基盤になってきた実態を言い表す。

「国全体の大きな方向性を財務省(旧大蔵省)はじめ役人が決め、根回しも官僚がやってくれる。政治家の興味は、行政の最たるものである個所付けとか業者選び、個別規制、許認可に向く。逆立ちしている。天下国家を論じる政治家をもっと増やさないと」─。皮肉を込めた指摘に、反論の余地はあるまい。

より良い政治を目指す上で「政権交代なき政治構造」からの脱皮は不可欠だろう。21世紀臨調のメンバーでもある飯尾氏は「マニフェスト選挙」に期待するが、政党の対応は「不十分」と懸念を隠さない。

しかし、ねじれ国会を「夜明け前の暗さ」と受け止めたように、決して悲観的ではない。それは「理屈さえきちんと示せば、日本の有権者は消費税アップも認める段階に来ている」と言うように、成熟しつつある有権者像が視野にあるからだろう。

ゲスト / Guest

  • 飯尾潤 / Jyun IIO

    日本 / Japan

    政策研究大学院大学教授 / Professor, GRIPS

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