2008年05月16日 00:00 〜 00:00
与謝野馨・前官房長官

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会見リポート

財政再建─試される職人の腕

西田 睦美 (日本経済新聞編集委員兼論説委員)

いま話題の人である。近著『堂々たる政治』(新潮新書)が好評を博し、月刊文芸春秋での麻生太郎前自民党幹事長との救国提言は、永田町の強い関心を呼んだ。「ポスト福田」の有力候補として名が挙がる。

「私は職人かたぎなので、仕事があれば喜んで打ち込むが、個人的な野心は自覚していない」。自らをこう評するが、司会者から重ねて可能性を問われて「よく考えてみる」と答えただけで、翌日の新聞では「次期総裁に意欲?」と報じられた。

会見内容はそうした生臭さとは無縁の政策論だった。一番言いたかったのは、財政再建の必要性であり、消費税の増税が避けられないということだったろう。

多くの与党議員は増税を掲げて選挙をしたくない。小沢民主党が消費税増税を封印しているから、なおさらだ。しかし必ずしも選挙に強くない与謝野氏は「勇気をもって言えるかどうか、自民党は責任政党として問われている。それが最も重要なことだ」と力説。社会保障の財源確保のために、消費税増税を正面から訴えるべきだとの考えを示した。

福田康夫首相の相談相手でもある。評判の悪い後期高齢者医療制度への理解を求める一方で、高齢者に夢を与える政策が必要とも語った。このすぐ後に、首相官邸に足を運び、首相に高齢者の雇用対策などを拡充するよう進言した。

講演では、首相の発信力の弱さを指摘し「天才・小泉(純一郎元首相)さんにみならうべきことがいっぱいある」と注文をつけるのも忘れなかった。

自民党税制調査会の小委員長という重責をになう。中川秀直元幹事長ら「上げ潮派」の抵抗を押し切って、消費税の増税案とまとめられるか。職人の腕が早速、試される。

ゲスト / Guest

  • 与謝野馨 / Kaoru YOSANO

    日本 / Japan

    前官房長官 / Former Chief Cabinet Secretary

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