2008年05月28日 00:00 〜 00:00
中山恭子・首相補佐官

申し込み締め切り

会見リポート

原則貫き拉致解決へ

小林 一博 (東京新聞論説委員)

「今は我慢のしどころです。もうしばらく被害者が解放されるまで我慢してほしい」。中山補佐官は、北朝鮮による拉致問題の日朝交渉が一つのヤマ場にあることを訴えた。

事件発生から約30年。数年前に被害者5人とその家族8人が帰っただけで、交渉は止まっている。片や6カ国協議での北朝鮮の核問題は、「核の完全な申告」に進みつつある。見返りとして、米国による北朝鮮のテロ支援国指定解除も取りざたされるなか、国内には「乗り遅れ論」が頭をもたげつつある。

中山補佐官は「拉致問題を中途半端にして国交正常化を急ぎたい勢力がいる」と警戒する。国交推進の議員連盟発足や拉致にかかわるいくつかの報道だ。一部被害者の生存と帰国、日本側の被害者家族との面会要請…。主張は自由だが、報道は「注意深く」と厳しく注文を付けた。

政府は「拉致解決なくして国交正常化なし」の原則を貫く。「幽閉されている被害者の安否確認ができない以上、全員生存を前提に交渉するのは当然」「ここで正常化したら、拉致解決の大きなてこが残らない」と原則の妥当性を繰り返し強調した。

では、ここで我慢すれば展望は開けるのか。一つの手掛かりは、2004年5月の小泉首相(当時)の第2次訪朝だ。金正日総書記は再調査を約束したとき、「起点に戻ろう」という表現を使ったという。補佐官は「解決済み」でなく「第1次訪朝時に戻って、もう一度交渉する」可能性と受けとっている。

さらに北朝鮮の大水害と国際的値上げによる食料とエネルギー危機、日米韓と中国との連携強化の動きなども念頭においてだろう。

外交常識の通じない国を相手に原則を貫きつつわずかな可能性を探る─拉致解決の困難さと苦悩もにじみ出る会見だった。

ゲスト / Guest

  • 中山恭子 / Kyoko NAKAYAMA

    日本 / Japan

    首相補佐官 / Assistant to the prime minister

ページのTOPへ