2008年02月28日 00:00 〜 00:00
エフード・オルメルト・イスラエル首相

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会見リポート

雄弁「北朝鮮の脅威」

石合 力 (朝日新聞外交国際兼政治グループ次長)

日本記者クラブでの会見を含む来日中のスピーチはいずれも草稿なしのアドリブだった。レトリックをまじえた雄弁かつ当意即妙の英語で強調したのは、イスラエルにとっての「北朝鮮の脅威」だった。イスラエルと対立するイラン、シリアなどと北朝鮮との結びつきを「悪の枢軸」と名指しで批判。「彼らは非通常兵器(核兵器)の開発で協力し、イスラエルを含む穏健諸国を脅かしている」と述べ、福田首相と情報分析を共有したことも明かした。

イスラエルにとって最大の脅威であるイランによる核開発問題は、イランの現政権と石油輸入などで関係を持つ日本にとっても懸念材料だ。そこに「北朝鮮の脅威」を絡めて、日本とイスラエルの戦略的利害の共通点を強調してみせた。

アラブ・イスラム対ユダヤといった従来の対立を「穏健」対「過激」の構図にパラダイムシフトさせようとする「ブッシュ流」の試みは、イランの核問題だけでなく、昨年11月の米アナポリス会議後の中東和平プロセスにも当てはまる。穏健派のアッバス自治政府議長のみを交渉相手とし、ヨルダン川西岸に国際社会の支援を集中させる一方、過激派ハマスが支配するガザには経済封鎖と懲罰的攻撃をかける。ハマスを先鋭化させたのではないかとの問いには「ハマスに穏健派も過激派もない。彼らはテロ組織なのだ」。

首相の側近が解説してくれた。「いま、やろうとしているのはパレスチナに西ドイツと東ドイツをつくることだ」。なるほど。ただ、パレスチナ分断策の後にドイツと同じ平和的統一の道筋が訪れる保証はどこにもない。

ゲスト / Guest

  • エフード・オルメルト / Ehud Olmert

    イスラエル / Israel

    首相 / Prime Minister

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