2007年12月26日 00:00 〜 00:00
小島明・日本経済研究センター会長「著者と語る『日本の選択』」

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会見リポート

慎重な楽観主義

潮田 道夫 (毎日新聞執行役員、論説委員長)

小島明さんの新著は、会長を務める「日本経済研究センター」の会報などに掲載・寄稿したものをまとめたものだ。しかし、まるで新たに書き下ろしたかのようである。冷戦終了後の世界と日本の構造変化を俯瞰できるうえに、主要な論点をほとんど網羅している。大学の教養課程などで「日本経済論」「世界経済論」などの教科書に使える、というのが一読しての感想だった。

優秀な経済ジャーナリストの話を聞くと、頭がすっきりする。度の合わなくなったメガネを作り直したような気がするものだ。この本も、この日の話もそうであった。

そして、小島さんが凡百の経済ジャーナリストと称する人々と違うのは、抑制的であることだ。人をアッと言わせてやろうというようなケレンがない。

豊富な国際経験が背後にあるから視線が遠くに届いている。そして穏当な考察。一言で評せば「慎重な楽観主義」と言えるのではないか。粗雑な議論の多い経済論壇でまことに貴重であって説得的である。

この日は小島さんが1時間、基調講演をした後、質疑になったが、たくさん質問が出て予定を40分もオーバーした。

日本の先行きについて、小島さんが基本的に「楽観」に立つのに対し、質問は「悲観」の側に立ってのものが多かった。小島さんの答えは本の表題にあるとおり、日本は「適者」のモデルを発見できるだろうということに尽きる。

それについて詳述する紙幅はないが、日本の発展モデルは「絶えず状況変化への適応を続けるダイナミック」なモデルだという観察と信念にあるのだろう。「恩師」であるドラッカーをめぐるさまざまなエピソードも明かしてくれたが、興味深く示唆的で、かつ感動的だった。

ゲスト / Guest

  • 小島明 / Akira KOJIMA

    日本 / Japan

    日本経済研究センター会長 / Chairman, Japan Center for Economic Research

研究テーマ:著者と語る『日本の選択』

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