2007年12月21日 00:00 〜 00:00
岡村黎明・北海道新聞メディア委員東京駐在

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会見リポート

視聴者あってこそのテレビ

吉井 透

2011年7月24日は現在のテレビ放送の電波が止まる日だ。岡村黎明さんは、この日のことを「テレビが突然消える日」と痛烈に語る。

テレビ放送のデジタル化の問題を考えるとき、私がいつも思い浮かべるのは人口約2000人の北海道島牧村である。海岸線には切り立った山が迫り、村内のほとんどが山の陰になってテレビ電波が届かない。村民は、中継局から村内10カ所のサテライトアンテナを経由した有線放送でテレビを見る。

地デジに向け、村は中継局から村内全域に光ファイバー回線を張り巡らす計画を進めている。インターネット向けのブロードバンドサービスも遅れており、テレビ放送と合わせて一気にデジタル化したい考えだ。遅くとも2年後の完成を目指す。ただ整備費用は6億円。国の補助を受けてもこのうち4億円は村側の負担になるという。村にとっては今一番頭の痛い問題である。

現在のテレビ電波が終了する2011年に地デジが受信できない地域はまだ残るとされる。総務省情報通信審議会は昨年12月、その対策のひとつとしてBS衛星を使った地上デジタル放送の再送信計画を発表した。

ただ再送信されるのはNHKの2つのチャンネルと各地方局の系列キー局の番組。視聴者は地方からかけ離れた首都圏のニュースや番組を見せられることになる。難視聴地域は高齢化率の高い過疎地が多い。特にテレビを楽しみにしている高齢者はこれで満足するのだろうか。

岡村さんは「地デジへの移行は視聴者の立場で考えよ」「国策だから国が完全移行に責任を持つべきだ」と主張する。高画質、データ放送などメリットばかり語られることが多い中で、あらためて国の乱暴さと、視聴者あってこそのテレビという当たり前の原点に気づかせられた。

ゲスト / Guest

  • 岡村黎明 / Reimei Okamura

    日本 / Japan

    北海道新聞メディア委員東京駐在 / Media Comittee Member of Hokkaido Shimbun

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