2007年12月05日 00:00 〜 00:00
バサンタ・シュレスタ・国際総合山岳開発センター局長

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会見リポート

ヒマラヤの新たな危機

田中 幸美 (産経新聞社会部)


地球温暖化の影響で、ヒマラヤの高山の氷河が解けてできた氷河湖が決壊、下流の村落が被害を受ける可能性が高まっているという。国連環境計画と合同でヒマラヤの環境などを調査している「国際総合山岳開発センター」のシュレスタ局長が、大分県別府市で開かれた「第1回アジア・太平洋水サミット」出席後東京に立ち寄り、ヒマラヤの新たな危機を訴えた。

シュレスタ局長は「気候変動の影響を最も強く受けているのがヒマラヤ」と話す。過去10年間で平均気温は最高0・6度上昇。1960年ごろには小さな水たまりだったものが、氷河の急激な溶解で天然のダム「氷河湖」に変容した。地球温暖化の進行とともに氷河湖拡大のペースはどんどん速まり、約9000の氷河湖のうち200カ所で決壊の恐れがあるという。水を支えきれずに氷河湖が決壊して起こる洪水は、ふもとの住民を危険にさらすばかりでなく、水力発電所や道路などのインフラも破壊する。3年に1回の割合でヒマラヤのどこかで洪水が起きているという。

慶応大の福井弘道教授(地球環境学)は昨年11月、同センターの協力で最も決壊の恐れのあるイムジャ湖にモニタリング装置を設置。下流住民に洪水を知らせようとインターネットによる早期警戒システムの構築に乗り出した。「このままだとエベレストが失われる。温暖化現象を身近に感じるきっかけになれば」と危機感を募らせる。

会見日は、京都議定書に定めのない2013年以降の地球温暖化対策の枠組みを話し合う「気候変動枠組み条約締約国会議」がインドネシアで開催中という絶好のタイミング。
「将来の世代に深刻な影響が及ぶ。一人一人の自覚を促すため、マスコミの皆さんの役割は大きい」。シュレスタ局長の言葉の意味は重い。

ゲスト / Guest

  • バサンタ・シュレスタ / Basanta Shrestha

    国際総合山岳開発センター局長 / Secretary‐General, ICIMOD

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