2007年12月04日 00:00 〜 00:00
アンヘル・グリア・OECD事務総長

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会見リポート

未来を作る営みは肩の力を抜いて

早川由紀美 (東京新聞社会部)

「読解力」「リテラシー」…。ちょっと前まで、あまり聞くことのなかった言葉が、学力の「世界標準」になりつつある。

2000年から3年に一度、経済協力開発機構(OECD)が世界の15歳を対象に実施している学習到達度調査(PISA)は参加国が増え続け、3回目の06年は57カ国・地域に。かねてから、日本の教育の比較的弱い部分とされている応用力ねらい打ちの調査に、今回は実施3分野ともに順位を下げた。

アンヘル・グリア事務総長は、この日本の結果を「リラックスしていい。フィンランドが抜きんでているだけ」などと愛嬌たっぷりに総括した。学力低下論争の中、「ゆとり」か「詰め込み」かの2項対立で語られがちな日本の教育についても「振り子のように揺れることは、まま起こる」と世界のどこでも起こり得ることとした。

「硬直したシステムを持つ国は柔軟性が求められ、極端に柔軟なシステムを持つ国は子どもたちにもっと義務感や規律を身につけさせるべきという議論が出る。大体、真ん中に落ち着いてくるものだ」。とかく眉間にしわを寄せてとなりがちな教育論議。未来を作る営みは、もっと肩の力を抜いて伝えた方がいいのかもしれない。

2011年度以降に実施される新学習指導要領は、いわゆる「PISA型学力」を強く意識したものになるはずだ。資料やグラフを読み解き、科学的に、論理的に自分の考えを自分の言葉で表現する。そんな能力が身に付くのは素敵なことだが、「空気をよむ」ことが求められ、感情に流されがちな日本社会では摩擦も生むだろう。今の方向での教育改革がきわめてうまく進んだ場合は、社会も痛みの伴う変革を迫られる可能性もある。

ゲスト / Guest

  • アンヘル・グリア / Craig McClure

    OECD事務総長 / Secretary-General of OECD

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