2007年02月13日 00:00 〜 00:00
リチャード・マニング・OECD開発援助委員会議長

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会見リポート

転機を迎えるODA

藤元 正 (日刊工業新聞経済部)

国際的にも、日本を取り巻く情勢という意味でも、政府開発援助(ODA)が転機を迎えている。

急速な経済発展に伴い、中国、インドをはじめとする経済協力開発機構(OECD)非加盟の途上国などがドナー大国として台頭。一方では欧州諸国のODA拡大策もあり、90年代に世界最大の援助国だった日本の存在感は低下し、国際社会から支出増額を強く求められている。

記者会見でも、こうした点での懸念や危機感が場を支配していたように思う。英独仏の欧州3カ国を少し上回る程度まで援助額が減った日本自体への影響や、中国の動向などに質問が集中した。

それに対し、マニング議長のメッセージは簡潔にして明瞭。「日本が財政的に厳しいことは承知している」と一定の理解を示しつつ、出身国である英国が、97年以降のODA拡大措置で国際的な発言権が高まったことを引き合いに出し、「ほかの優先課題に対して、ODAがどの程度優先かを考えることも重要だ」と日本の役割拡大に期待を示した。

新興ドナーの存在については「途上国の選択の幅が広がり、歓迎されるべきこと」と述べる半面、課題も指摘した。

今回の来日直前に中国を訪問した際には、開発協力についての透明性改善とプロジェクトでの持続可能性の配慮、さらにほかのドナー国と意見交換の機会を設けるよう、中国側に伝えたという。

日本は08年の先進8カ国首脳会議(G8サミット)主催国。激変する世界情勢の中で、発言力強化のツールとして引き続きODAを活用するとともに、途上国の次の世代の人々の発展・育成につながる持続可能な援助のあり方に向け、もっと知恵を絞る必要があると感じた。

ゲスト / Guest

  • リチャード・マニング / Richard Manning

    OECD開発援助委員会議長 / The Chairman, OECD Development Assistance Committee

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