2006年12月04日 00:00 〜 00:00
鈴木琢磨・毎日新聞編集委員「北朝鮮」18

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会見リポート

愛をもって「真意」を読む

谷田 邦一 (朝日新聞編集委員)

拉致、ミサイル、核開発と、意表をつく瀬戸際策で国際社会を振り回し続ける北朝鮮。この国を理解るには、どうすればいいのか。

「愛をもって真意を読む」

硬軟問わず北朝鮮問題にこだわる鈴木琢磨氏は、こんな持論を披露した。東京にも情報は多いのに、実は分析手法の底が浅いのだという。

ヒントは「『ナゾ』とか『ベールに包まれる』という形容詞をメディアが早くやめ、在日社会の秘匿された情報や歴史、日朝の接点や動きをいかに引き出すか」にあるという。

そうした手法をもとに、金正日総書記の後継者問題と拉致事件のふたつの題材を読み解いてみせた。

前者では、昨年7月に平壌で出版された伝記を取り上げた。金正日総書記の妻、高英姫夫人が柔道家だった父親の生涯をつづった内容だが、04年に死亡説が流れた高夫人の伝記がなぜ今、世に出回るのか。

鈴木氏は、軍内部で高夫人を偶像化するキャンペーンが起きた02年、息子の正哲氏が後継者の有力候補に挙がった過去の事例をもとに、「後継者問題に何らかの決着があったのではないか」と推測する。

拉致事件では、なぜ拉致という行為に及んだのかにも踏み込んだ。

北朝鮮では、どの百貨店や学校でも動物や鉱石の標本を見かけたという。実物を教材にする北朝鮮の「直観物教育」が、70年代以降、金総書記への権力移行の流れと重なり、対南工作のために「本物の日本人」を必要としたのではないかと読んだ。

のんびりした大阪弁の語り口の端々に、北朝鮮問題に真剣に取り組んでこなかったメディアと政府への批判が混じる。冷戦時代、クレムノロジーという旧ソ連中枢を知るための学術領域があったが、本格的な「平壌分析学」創設の勧めと聞いた。


ゲスト / Guest

  • 鈴木琢磨 / Takuma, Suzuki

    日本 / Japan

    毎日新聞編集委員

研究テーマ:北朝鮮

研究会回数:18

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