2006年11月15日 00:00 〜 00:00
嘉田由紀子・滋賀県知事

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会見リポート

次回は「政治家」の講義を期待

縣 忠明 (産経新聞エフシージー総合研究所編集委員)

この仕事を長くしていると、ゲストが会見で何を話すかは大体想像がつく。ところが嘉田由紀子知事には意表をつかれた。

嘉田知事は7月の知事選で「もったいない」をキャッチフレーズに東海道新幹線の栗東新駅の建設凍結を訴え、現職を撃破した。当然、凍結問題でどのような見解を示すか、興味津々で待ち構えていた。

だが、嘉田知事は新駅の問題を出さずに、パソコンとパワーポイントを駆使するという新鮮な手法で、ご自身の専門分野である環境社会学から見た琵琶湖と地域社会のかかわりについて話した。会見というより、「嘉田教授の講義」という表現のほうがぴったりだ。

この中で、「3つの『もったない』(滋賀の方言ではこう言う)」として①税金の無駄遣い②自然破壊③若者の育つ力の阻害─をあげ、これらの再生が知事選出馬の動機だったことを明らかにした。持続可能な循環型社会構築の重要性も強調した。

中身は濃かった。現場で育った学者らしい丁寧な講義に、頭にやや白いものが目立つ出席者も、遠い昔の学生時代に帰ったかのように聞き入っていたほどだ。

しかしである。やはり「教授」としてだけでは何か物足りない。「知事」「政治家」の立場で、たとえ10分でも凍結問題に対する見解を示してほしかったと感じたのは筆者だけだっただろうか。

むろん、質疑応答ではこの問題が多く出された。嘉田知事は「今年度末までには結論を出したい」としたものの、自身の明確な考えは示さなかった。今後も地元でのデリケートな交渉が続くだろうから、仕方のない面もあるが…。次回はぜひ「政治家・嘉田由紀子」としての講義を受けてみたいものである。

ゲスト / Guest

  • 嘉田由紀子 / Yukiko Kada

    日本 / Japan

    滋賀県知事 / Governor, Shiga Prefecture

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