2006年11月13日 00:00 〜 00:00
伊吹文明・文部科学相

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会見リポート

伊吹流理念─正念場はこれから

玉木 研二 (毎日新聞論説委員)

時の人、といってよい。この人が文部科学相になるのを待っていたように、教育の諸問題や矛盾が露呈し、「さあ、どうする」と答えと決断を迫ったようだ。

もともと文教族とは遠く、複雑な制度や法規に予備知識などもなかっただろう。むしろそれが幸いしたかもしれない。履修不足問題では、官僚や党の思惑にはさまれて必ずしも意図する通りの結果ではなかっただろうが、正面からスピーディーな処置をし、当面の大混乱は避けた。

また続発する「いじめ自殺」のさなか、文科省に届いた「自殺予告」の手紙を、真偽定かでないまま深夜に緊急発表させた。極めて異例のことである。

「文部省が全力を挙げて対応する姿勢を示すことが大事。いじめの実態調査で子どもから訴えのあったものはすべて包み隠さず出せ、と言っている文科省がその手紙を握っていたというわけにはいかない。いずれにせよ非難を受けるのは私。私が決断して公表した」

こう語ったが、このような率直さが一連の対応でまず好評を得たゆえんだろう。「学校の実情を隠さず、むしろ開示する方がいい評価を得られるようにしたい」という考え方も実現できれば成果は大きい。

ただ、教育の問題はどんな手立てをもってしても即効性は望めず、結果がなかなか目に見えにくい。試行錯誤の連続でもある。旧大蔵官僚を出自とし、経済政策に通じた文科相だが、合理性や数値だけでは割り切れぬ諸問題にどう粘り腰で取り組めるか。正念場はこれからだろう。

時間が限られ、教育基本法改正について「伊吹流理念」のようなものをじっくり聞けなかったのは残念だった。次の機会を期待したい。

ゲスト / Guest

  • 伊吹文明 / Bunmei Ibuki

    日本 / Japan

    文部科学相 / Minister, The Ministry of Education,Culture,Sports,Science & Technology in Japan

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