2006年11月06日 00:00 〜 00:00
森本あんり・国際基督教大学教授「アメリカの底流」2

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会見リポート

不寛容は「揺らぎ」に起因

菱沼 隆雄 (読売新聞国際部次長)

保守化が進んだとされる現在のアメリカ社会の深層を、宗教から読みほぐすことで、理解を助けてくれた研究会だった。

「アメリカと宗教」といえば、メディアはもっぱら、強硬化するブッシュ政権へのネオコンなど宗教保守派の影響に焦点をあててきた。だが、2001年の同時テロ後のアメリカが自由の拡大など価値観の押し付けに走り、国内でも安全保障最優先の立場から包容力を失い、不寛容になったとすれば、それは宗教心の強さからではなく、むしろ揺らぎに起因すると指摘する森本教授の説明には、「目からウロコ」の感がある。

「信仰に確信のある人は寛容の度合いが高い。揺らぎが生じている人は不寛容」との説も、「大量の移民が持ち込む多様な文化や宗教を前に狼狽し、アイデンティティーの危機」を感じているアメリカが、自らのコアにつきささる痛みを感じているとの解説で納得する。アメリカが危機感を抱いているのはテロによる外からの攻撃だけではないのだ。

世界の紛争解決に乗り込んでいくアメリカについては、いかに宗教的に特殊な国かという視点を提示してくれた。

一般的に高い宗教心を示すのは、主にカトリックの国だが、米国ではプロテスタントが優勢だ。豊かになれば、宗教心が薄れる傾向にあるが米国は例外。それは、国民国家が生まれる時代に、はじめから宗教的、神学的な理念によって、建てられた歴史の成り立ちにかかわっている。

研究会は米中間選挙の前日の6日におこなわれた。保守派に主導されてきた共和党の敗北を宗教的観点からはどのように受けとめられたのか。続編があるなら聞いてみたい。

ゲスト / Guest

  • 森本あんり / Anri Morimoto

    日本 / Japan

    国際基督教大学教授 / Professor, International Chiristian University

研究テーマ:アメリカの底流

研究会回数:2

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