2006年10月20日 00:00 〜 00:00
グエン・タン・ズン・ベトナム首相

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会見リポート

戦時の闘士・平時の経済通

山田 厚史 (朝日新聞編集委員)

ベトナム最南端のカマウ市で生まれ、12歳で解放戦線に参加した。泥と炎の戦場を連絡員として走り、やがてカンボジア国境のキエンザン省に派遣され軍務所長として指揮。米軍が撤退した時26歳、青春は戦いの中だった。「ベトコンの闘士」を思わす経歴だが、会見に現れたズン首相は剛直とは対極の雰囲気。南部人の気質かざっくばらんで柔軟。「ベトナムも頭の柔らかな人が首相になった」と
新鮮な印象を与えた。

「最大の貿易相手国である日本は発展に欠かせない最大のパートナー」、首相になって最初の訪問国に日本を選んだ。経済発展を最優先の課題にしているからだ。2010年までに一人当たりGDPを1200ドル(現在700ドル)に引き上げるという。日本と経済連携協定(FTA)の協議を始め、近くWTOに加盟する、と言明した。

解放戦争の輝かしい勝利の陰でベトナムは深い傷を負った。数百万人が死亡・負傷し、産業や生活のインフラは根こそぎ破壊された。その後、中国とは紛争が起き、頼みとしたソ連は崩壊した。独自の市場経済ドイモイを手探りで始めて20年、やっと成長の足がかりをつかんだが、タイやマレーシアに水を開けられている。 「奇跡的な復興を遂げた日本の知恵を借りたい」と日本に援助を求めるが、ベ
トナムには底力がある。

アメリカを破った戦闘力の背後には、正確で持続的な組織プレーができる勤勉な風土が息づいている。

8000万の人口は豊かな労働力と大きな市場である。政策と指導者に恵まれれば躍進する可能性を秘めた国・ベトナム。党中央経済委員長、国家銀行総裁を経験した柔らか頭のズン首相が腕を振るう時がきた。

ゲスト / Guest

  • グエン・タン・ズン / Nguyen Tan Dung

    ベトナム / vietnam

    首相 / Prime Minister

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