2006年10月19日 00:00 〜 00:00
ジャック・ロゲ・IOC会長

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会見リポート

「外科医」の手法と決断

結城 和香子 (読売新聞運動部次長)

2001年にファン・アントニオ・サマランチ氏から国際オリンピック委員会(IOC)会長職を引き継いで以来、4度目の来日。今回は、2016年夏季五輪への日本の都市(東京都)の立候補を視野に入れた、日本オリンピック委員会(JOC)などからの働きかけに応じた。

ベルギーの整形外科医だったジャック・ロゲ会長は、IOCを率いる手腕にも「外科医」がのぞく。詳細なデータを把握し、執刀時には自ら決断する。外交官だったサマランチ氏一流の根回し、人心の読みや、半歩先を見越した布石といった掌握術ではなく、透明性、民主性、理論で攻める。良くも悪くも、IOCを会社組織に変えたと言われるゆえんだ。

ロゲ会長は、事実を告知しないことはあっても、曲げて伝えることはしないため、意図をその言葉に汲み易い。会見では、北朝鮮の核実験実施宣言で、2008年北京五輪に向けた初の南北朝鮮合同チーム結成に、今や「疑問符が付いた」と、先行きの暗雲を認めた。野球の五輪実施競技への復帰には、「大リーグトップ選手の参加と薬物問題」が、依然大きな障壁であると指摘した。

肝心の東京五輪招致に関しては、二つのメッセージを残した。東京の立候補をIOCが非常に喜んでいること。これは本音で、大都市が手を挙げ五輪のプレステージが上がること、経済大国日本で五輪への関心が再び高まることは、IOCの有形無形の財産になる。

ただ、日本の招致の質の高さに確信を示しながらも、過去8度の開催経験がある米国などを念頭に、「他の候補都市も全く同じで、厳しい戦いになる」とクギを刺した。わざわざ言及したあたり、日本の招致関係者はどう読むか。

ゲスト / Guest

  • ジャック・ロゲ / Jacques Rogge

    ベルギー / Belgium

    IOC会長 / Chairman, IOC

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